2024年12月5日現在
227,183人のサービス介助士が全国で活躍中!
サービス介助士実技教習での車いす操作実習
総合ロールプレイ・立ち上がりの介助
イオンリテール株式会社は、日本国内外の約180社の企業で構成される大手流通グループ「イオン」の中核企業として、イオン、ザ・ビッグ、イオンスーパーセンター、メガマート、イオンモール・イオンショッピングセンター、まいばすけっと、ビブレ・フォーラスをはじめとする、GMS(総合小売業)やスーパーマーケットなどの店舗運営を行っている。運営店舗数は約500店舗、約6万9000人の従業員が活躍している(2011年2月現在)。
イオンリテール株式会社 URL:http://www.aeonretail.jp/
イオングループでサービス介助士を導入したのは2006年のこと。「お客さまへの貢献を永遠の使命とし、最もお客さま志向に徹する企業集団」という企業理念にもとづく店舗づくりの一環として、「おもてなしの心と介助技術」を学ぶサービス介助士に着目。イオンリテール運営店舗各店の全店長および主任以上の従業員への資格取得をすすめてきた。グループ全体での資格取得者数は9023名(2012年1月現在)を数える。
サービス介助士の導入効果について、イオンリテール株式会社教育訓練部の傍島(そばじま)律子さんは、 「地域貢献の一環としてのサービス介助士の導入はお客さまにも好評で、従業員の応対に対する感謝の声をいただいています」という。
また、イオンでは、高齢のお客さまや障がいのあるお客さまも安心して楽しくお買い物をしていただくために、建物や設備などのバリアフリー化を積極的に進めているが、こうしたハード面の整備にも、サービス介助士の視点が大きく役立っているという。
「従業員の多くが気づきとしてあげているのが、店舗の通路幅の確保の重要さです。また、車いす使用のお客さまの目線の高さにある商品の陳列に危険がないようにすることの大切さもあげています。このような点にも留意することで、設備がバリアフリーだというだけでは実現できない、お客さまへの細やかな配慮ができるようになりました」(イオンリテール 傍島さん)
サービス介助士の提案で実施しているショッピングカーの貸し出し(イオン葛西店)
東京都江戸川区、地下鉄東西線西葛西駅近くに立地するイオン葛西店は、エリア内に30〜40歳代のファミリー層と10歳代の人口が増えているという、都内では珍しい商圏を持つ店舗である。しかし、実際に店舗に頻繁に来店されるのは60歳代以上の高齢のお客さまが多く、接客サービスにおいても高齢者への配慮が欠かせないという。イオン葛西店所属のサービス介助士資格取得者のお二人に話をうかがった。
小池聖子さん(イオン葛西店 人事教育主任)
イオン葛西店で人事教育主任をしています。業務の一つとして毎月1回、葛西店のパート・アルバイトの入社オリエンテーションを担当していますが、その際に、サービス介助士で学んだことをもとに、高齢者への応対を説明しています。「高齢のお客さまにはゆっくり、はっきり話して、ご案内する時にはゆっくり歩いてください。自分のペースでどんどん歩いて、曲がり角で急に曲がったりすると、見失われてしまいますよ」という基本から話しています。
高齢者への応対には、細やかな配慮が必要です。例えば「カレールーはどこですか」と尋ねられた場合に、商品棚の前までご一緒して「ここにありますよ」と言って離れてしまうのでは、まだ不十分なのです。カレールーひとつにしても、いくつもの棚にたくさんの種類が並んでいます。しかし、高齢者は視野が狭く、視力も低下しているため、広い棚のすべてを見渡して、自分のほしい品物を探すのはとても大変です。商品を手にとって「これですよ」とお教えし、容量に違いがあれば「6皿分と12皿分がありますよ」とお伝えしてほしい、と説明しています。入社オリエンテーションを受講している新人スタッフも、「この店ではそこまで求められているんだ」と新鮮な驚きで聞き、理解してくれているようです。
こうした説明ができるようになったのは、サービス介助士の実技教習で高齢者疑似体験を経験したことが大きいですね。高齢者の感覚に近づくために、白内障ゴーグルをかけたときに、視界にもやがかかって「こんなにも見えにくくなるんだ」と実感したことは衝撃的でした。さらに耳栓をすることで「見えにくい、聞こえにくい」ことの大変さを感じることができました。
運動機能の低下を体験するためにサポーターやおもりをつけて歩くのは、思っていた以上に辛かったです。また、道路を歩いていたときには、自分は道路の端を歩いていたつもりなのに、車がすぐ脇をすり抜けていったので驚きました。エンジン音が聞こえにくいので、車が近付いていることがわからないのです。「もし、ここでよろけていたら…」と思い、ぞっとしました。
コンビニで買い物をしたときにも、手袋をした上から、指を2本ずつテープで縛ってあるので、財布からなかなか小銭を出せません。あきらめてお札で払ってお釣りをもらいました。本当はポイントカードも出したかったのですが、とても無理でした。
この体験があるので、「お客さまがお金を出されるのをせかさないように」ということも入社オリエンテーションで伝えています。私たち店舗スタッフが「せかさずに、ゆっくり待つ」対応をしていると、まわりのお客さまもあたたかく見守ってくださいます。こうした環境はありがたいことだと思います。
お客さまへの気づかいの一つひとつは、「小さなこと」かもしれません。しかし、その積み重ねがあってこそ、数多くの店の中から「イオンに行こう」と選んでいただけるのだということを、入社オリエンテーションでは繰り返し伝えています。イオンがお客さまにとって買いやすい、来店したい店となることが私たちの目指すところですが、これはお客さまにとってもよいことだと思うのです。
今後取り組んでみたいのは認知症サポーターの研修です。イオングループ全体でも取り組みをすすめていますが、これからのお客さま対応には、認知症に対するさらに深い理解が必要だと思いますので、売場のスタッフに学んでもらうきっかけを与えられたらと思っています。
浅川早苗さん(イオン葛西店 食品チェッカー主任)
私は食品フロアの食品レジの責任者をしています。当店へ日々のお買い物に来店される回数が多いのは、やはり高齢のお客さまです。健康管理もかねてその日に必要な食品を毎日買いに来られる方もいらっしゃいます。こうしたお客さまに毎日応対しているということもあり、サービス介助士の実技教習では、高齢者疑似体験がとても印象に残りました。
高齢者疑似体験では、白内障ゴーグルをかけ、耳栓をして、手足にサポーターやおもりをつけて外出します。インストラクターからは「買い物をしたりお店で食事をしたりするときには、小銭を使って大変さを実感してください」と言われていたのですが、その大変さに思わずお札を出して支払ってしまいました。
この経験から、翌日からはレジで高齢のお客さまが千円札や五千円札で支払おうとされたときにも、財布の中に小銭がたくさんあるようなら「どうぞゆっくり出してください」とお声をかけたり、財布から小銭を取り出しにくそうなら「こちらのお皿に出してください」と伝えたりするようになりました。
資格を取得することで、こうした気配りができるように自分自身変わったかなと思います。食品レジの責任者として、まわりの従業員にも自分の経験を伝えることで、同じ気配りができ、全体のサービスレベルが向上するよう取り組んでいます。
実技教習で車いすの操作の実習をしたことも役立っています。車いすで来店されるお客さまには「袋づめをしますか」、「車いすの後ろに袋をかけますか」などのお声がけをしていますが、自分が実際に車いすを操作したり、車いすの介助を受ける側の体験をしたことがお手伝いにも生かせていると思います。
また、お客さま対応だけではなく、店内の設備や環境整備に対する見方も変わってきました。オープンから年数のたった店舗ということもあり、大きな改善は難しいのですが、通路の幅やレジの間隔が通りにくく感じるところは少し棚やレジをずらしてみたりしています。スペースが限られているので、すべてを広げることはできないのですが、「せめて1ヵ所は広い場所を確保しよう」などと、少しずつ工夫しています。
これからさらに学んでみたいのは手話です。いつもご来店いただいている聴覚に障がいのあるお客さまと手話で会話ができるようになれればいいなと思っています。「いらないよ」とか、「これでお願い」などの意思表示は、しぐさを見ていればわかりますし、こちらがゆっくり話せば口の動きで理解していただけるとは思うのですが、挨拶などの簡単な内容からでも手話でご案内できれば、もっと気持ちよくお買い物をしていただけるのではと思っています。機会があればぜひチャレンジしたいです。
小池聖子さん(左)、浅川早苗さん(右)
イオンリテール株式会社では、今後も各店舗の店長・課長以上は、必ずサービス介助士を取得するよう取り組みを継続していく方針だ。
イオンリテールは、誰もが便利に快適に利用できる「人にやさしいお店づくり」で地域に貢献するイオングループの推進力として、これからもサービス介助士の活躍が期待されている。【東京】
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