2024年12月5日現在
227,183人のサービス介助士が全国で活躍中!
▲尼崎市交通局のマスコットキャラクター「あまっこ」のラッピングバス「あまっこ号」(写真提供:尼崎市交通局)
尼崎市交通局は、兵庫県尼崎市の市営バスの運行を担当する部門である。交通局直営と民間事業者への管理委託を合わせ28路線136台(2010年3月現在)の路線バスが主要駅と市の南北を結び、市民に身近な交通機関として親しまれている。
尼崎市交通局URL:http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/bus/
同局では、安全性・利便性を向上し、乗客に快適に楽しくバスを利用していただくためのさまざまな取り組みを進めてきた。特に車両のバリアフリー化に力を入れ、1998年には「人と環境にやさしいバス」として、信号などでの停車時にはエンジンを自動停止するアイドリングストップ機能を備えた、昇降口に段差のないノンステップバスの導入を開始。以降、新規車両の更新時にはすべてノンステップバスを導入し、ついに2009年3月には全国で初めて、ノンステップバス導入率100%を達成した。
ノンステップバスは乗車口に階段がなく、床面も従来の半分以下の30cmの高さになっている。また、車いすに乗っている人が利用するときにはさらに車体を下げ、中央ドアから出る電動のスロープなどを使って、乗り降りすることもできる。
子どもたちに市営バスに親しんでもらうことを目的に、希望する小学校へ交通局の職員と市営バスが訪問して開催する「1日バス教室」でも、ノンステップバスを小学校の校庭などに停めて、実際に仕組みや乗車マナーなどを説明し、車いすでのノンステップバスの乗り降り体験も行っている。
▲ノンステップバスの電動スロープ
▲「1日バス教室」で小学生が車いすでの乗り降りを体験
(上記の写真は、尼崎市交通局ホームページhttp://www.city.amagasaki.hyogo.jp/bus/より転載)
尼崎市交通局では、ノンステップバス導入などハード面での利用者サービス向上とともに、ソフト面のサービス改善にも努め、その一環として、乗客への接遇向上を目的に、約80名のバス乗務員全員がサービス介助士を取得することを決定した。すでに2009年5月以降、15人(うち乗務員9人)がを取得。有資格者が乗務するバスには入口と出口に、専用のステッカーを貼り、車内放送でも運転手がサービス介助士であることをアナウンスしている。
▲オリジナルのサービス介助士ステッカーを
資格取得者が乗務するバスの入り口に掲示
(左写真提供:尼崎市交通局)
公営交通バス事業者におけるサービス介助士取得はこれまでも大阪市や名古屋市での例がある。しかしこれらはおもに運行管理を担当する職員が資格を取得して指導に当たるものであり、実際にバスに乗務する乗務員を対象に資格取得を進めるのは、全国29の公営交通バス事業者で初めてのことだという。
このサービス介助士の乗務については、地元の新聞各紙やケーブルテレビなどで取り上げられ、市営バスの利用客の中でも徐々に関心が高まっている。「どこに行ったらサービス介助士が運転しているバスに乗れますか」という問い合わせを受けることもあるそうだ。今後は1年に10人ずつ資格取得者を増やし、8年間で交通局全乗務員の取得を目指す計画である。
この乗務員のサービス介助士取得の取り組みは、自治体における先進的な業務改善の例として、2010年3月に東京で開催された第4回全国都市改善改革実践事例発表会「改船(KAIZEN)なかの20丸」においても、「事故件数と消費燃料の両方の削減」などの施策とともに発表された。
▲第4回全国都市改善改革実践事例発表会「改船(KAIZEN)なかの20丸」で尼崎市交通局の取り組みを紹介
乗務員のサービス介助士取得を中心になって進めてきた牛丸和彦さん(尼崎市交通局運輸課塚口営業所)は、取り組みを始めたきっかけを次のように語る。
「尼崎市営バスでは、ノンステップバス導入率の向上にともない、車いす使用のお客様の乗車が徐々に増えています。しかし、乗務員が自信をもって応対できているかというと、そうではありませんでした。よい研修や資格がないかと探していたところ、公営交通事業者の会報誌で他局のさまざまな取り組みが紹介されている中の『サービス介助士を地下鉄・バス両方の部門で取得』という記事を読み、どんな資格かなと興味を持ちました」
2009年当時、運輸課管理指導担当係長として乗務員の教育に当たっていた牛丸さんは、早速、同じ管理指導担当の朝野哲司さんとともに、サービス介助士の講座説明会に参加。そこで体験した「おもてなしの心と介助技術」の学びが、まさにバス乗務員に求められているものだと感じ、導入を決めた。
同年5月、まずは管理指導担当の上野利浩さん、朝野哲司さんら3人がサービス介助士を取得した(朝野さんはその後総務課に異動)。上野さんと朝野さんは「資格取得によって、大きな気持ちの変化がありました」と語る。
「まず、身近な家族である母親や父親の気持ちがわかるようになりました。以前は母親が買い物のときに小銭をなかなか出せないでいたりすると『なんでや…?』と思っていました。自分が高齢者疑似体験で白内障ゴーグルをかけ、手袋をして手先が器用に使えない状態でお金を出そうとすると、本当に出しづらく、『ああ、そうなんや…』と、やっと気持ちがわかりましたね。早速、小銭を出しやすい大きながま口型の財布を母のために買いました。こうして両親の気持ちがわかってきたのと同じように、ほかの人の気持ちも察することができるようになり、お客様への対応にも役立っていると思います」(上野さん)
「それまでに知識として知っていたことが、高齢者疑似体験をすることで実感となりました。私もバスの乗務員だったころ、なぜ高齢のお客様は小銭がたくさん財布の中にあるのに、千円札でばかり運賃を支払われるのだろうかと不思議に思っていましたが、疑似体験をしてみて納得しました。
資格を取得してからは、高齢者に対してだけでなく、いろいろな場面で、相手の立場に立つことや思いやりの心を持つことができるようになったと思います。仕事上はもちろん普段の生活の中でも、お困りの様子の人を見かけたときには、自信を持ってお手伝いの声をかけられるようになりました」(朝野さん)
これから資格取得にチャレンジする人に向け、上野さんは「学べば必ず意識は変わる」、朝野さんは「気づきが自信につながる」とアドバイスをしている。
▲朝野さん(左)、牛丸さん(中央)、上野さん(右)
交通局内のサービス介助士資格取得者へのアンケートでも、資格取得により「ゆとりを持ってお客様に接することができるようになった」「自信を持って応対できるようになった」などの声が多く寄せられている。
(※お答えいただいた内容の一部を抜粋してご紹介しました)
尼崎市交通局では、今後、バス事業を管理受託している民間事業者の乗務員にもサービス介助士の取得を働きかけ、市営バスの全車両にサービス介助士が乗務することを目指している。同局の牛丸さんは「計画ではまだ時間がかかりますが、できるだけ早く全員が資格を取得してお客様に接していただきたいですね」と意気込みを語る。
「公営バスの事業者は、全国どこでも厳しい経営状況にあります。多くのお客様にバスをご利用いただくためには、市民やお客様から『やっぱり市バスの運転手は違う。市バスでないとあかん』という、他社に勝る信頼を得ることが一番だと考えます。サービス介助士を学ぶ中で高齢者や障がいのある方について理解できれば、自然とすべての人に対して相手の立場に立ったやさしい『おもてなしの心』で接することができ、それが信頼につながっていくと思います」(牛丸さん)
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