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人の違いを活かし合う
人の違いを活かし合う

JALのD&I推進とThanksカードから考える未来の組織の在り方

日本航空株式会社様は、日本を代表する航空会社で、航空会社として最も長い歴史を持ちます。
現在さまざまな取り組みを行う中で、2014年にトップコミットメントとして「ダイバーシティ宣言」を発信して以来、性別・年齢・国籍・人種・障がいの有無・性的指向・性自認などの属性によらず、多様な社員の誰もがいきいきと活躍できる会社を目指し、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進しています。

今回は、日本航空株式会社 人財本部 人財戦略部 D&I推進グループの上野桃子様に、社内でのD&I推進の仕組みと社員同士を褒め合う取り組みであるThanksカードについてIXラボ大学生インターンがお話を伺いました。

JAL D&Iラボの取り組み

-D&I推進の取り組みであるD&Iラボには大きな柱として2つのプロジェクトを行っていると思われるのですが、その2つのグループプロジェクト、D&Iラボプロジェクト(以下、D&Iラボ)それぞれの取り組みについて教えていただけますでしょうか?

上野さんD&Iラボは、社員の自律的、自発的な声を積極的に取り込んで、社員の意思や想いをもとにD&Iを推進していきたいという考えから取り組んでいるプロジェクトになります。
具体的な取り組みについてお話しすると、2021年度は、「女性の活躍」、「グローバル人財の活躍」、「障がいのある社員の活躍」、「社員のライフキャリア形成」の4つの領域に分かれて活動を行っています。
4つのテーマを掲げ、JALグループの様々な職種から有志に集まっていただき、チームごとに研究と施策の提言を行っております。
まとめると、グループプロジェクトはグループ会社のD&I推進担当者が中心となって法対応やコンプライアンスの情報発信や意見交換会を実施しているもので、D&Iラボはグループや職種の垣根を越えて、D&I推進に向けて1年間で研究を進め、施策の提言を行っている活動です。

-2つのプロジェクトによって、D&I推進を進めることで貴社内で変化したことはありますか?

上野さんD&Iラボでの施策の1つだったのですが、女性活躍を推進するチームを中心に2021年度の活動の中でJALグループ全社員を対象とした女性活躍やライフキャリアに関する大規模な調査を行いました。
7000人以上の回答があり、この調査から分析した社員の声に基づいてD&Iをはじめとした施策に反映をしています。
また、経営層が重要な意思決定を行っていくうえで、従来以上に社員の声がダイレクトに反映されやすい環境が整ってきていると感じており、これは大変良い変化だと考えています。
さらに、プロジェクトの研究結果や提言発表の際に、経営層と社員が直接対話できる機会になっていることから、社員の声が強く届くという観点からも引き続き、ラボの活動を進化させていきたいと考えています。

-近年では、「ダイバーシティ、エクイティ(注1)&インクルージョン」と呼ばれるようになってきておりますが、御社でのエクイティついての考えや何か取り組まれていることはありますか?

(注1)エクイティ:日本語に訳すと「公平性」のことで、情報、機会、リソースへのアクセスを、すべての人に公平に提供しようとするものです。

上野さんJALグループでも、公平性については以前よりも重要な要素であるという考えに基づいて、特に人権の尊重という観点を大切にD&Iの推進の取り組みを進めています。
2019年にJALグループの人権方針を策定し、属性に関わらずすべての人がお互いを尊重し、生き生きと活躍できる会社となるための取り組みを進めています。
また2021年度には、JALグループの人権尊重に関わる規程を新たに定め、人権デューデリジェンスを明文化して、社員の意識情勢の取り組みに加えて、会社として明確な指針を持って人権尊重の取り組みを進めております。

垣根を越えて感謝の気持ちを伝える
「Thanksカード」

-貴社では、「Thanksカード」という、社員同士で感謝の気持ちを手書きのカードで伝え、褒める取り組みをされていると伺いました。

上野さんThanksカードにつきましては、D&I推進グループとは別の部門が管轄をしています。なので、ThanksカードはD&I推進の一環として始めた取り組みではありませんが、「褒め合い讃え合う」職場風土を醸成し、信頼関係を築き、コミュニケーションの向上に繋げることを目的として2006年から導入が開始されています。

Thanksカード

上野さんThanksカード自体は名刺サイズくらいなのですが、ちょっとしたお礼や感謝の気持ちを伝えたいときに、部門内や部門の垣根を越えて、さらには世界中のJALの仲間にも自由に「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えることができます。
ITの発達に伴い、メールでのやり取りが多くなってきたのですが、Thanksカードは手書きになっていて、アナログである手書きでのやり取りが新鮮で、心を込めることができます。
私自身も、Thanksカードを受け取るとうれしいですし、日ごろの努力や評価されることや感謝されることの喜びをThanksカードを受け取ることによって感じることができ、働く上でのモチベーションの向上にもつながるのではないかと思います。

-現在、コロナによって在宅勤務が多くなったかと思いますが、働き方が変化する中で、取り組みへの影響や変化はありましたか?

上野さん対面で直接、Thanksカードを贈り合う機会は少なくなったかもしれませんが、ロッカーに入れたりなど、Thanksカードを贈る活動は引き続き行われています。
手書きの良さがある反面、働き方の変化に伴って、電子版のThanksカードのトライアルを実施いたしましたが、本運用に向けて、現在仕組化を検討しています。

-貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

編集後記

日本航空様のD&Iラボで行われている取り組みは、IXを構成する要素である「多様性・違いを活かし合う」と「心理的安全性を確保する」について考えることができます。
D&Iラボの取り組みの1つであるラボプロジェクトは、社員の自立的な意思や思いを取り込んでいることから、さまざまな考えや価値観を取り入れ、生かす環境が整っていると考えることができます。
また、プロジェクトの研究結果や提言発表の際に、経営層と社員が直接対話できる機会があるということから、組織の中でも、誰もが自由に自分の考えや意見を提示することができるという面で、心理的安全性が確保された状態であると言えます。
次に、Thanksカードの取り組みでは、「心理的安全性を確保する」から考えることができます。個々人がお互いを尊重し合うことで、組織の中での役割を自覚し、職場が力をより発揮できる場所になるのではないでしょうか。
そして、ふたつの要素が達成されると、所属する組織への愛着を感じ、組織の一員であるという自覚を持つことができるようになり、そのような意味では、「ビロンギング(帰属意識)」の要素も含まれてくるのではないかと考えられます。
これらを踏まえて、私は、今後の組織の在り方として、組織内のメンバーの価値観や考えが尊重され、対等に扱われることが重要だと考えます。それらが達成されて、初めて組織の一員であるという自覚を持つことができるのではないでしょうか。
今回、取材に協力していただいた上野様、誠にありがとうございました。

(取材:IXラボ大学生インターン平松にち佳)

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