株式会社JR東日本テクノハートTESSEI様(以下TESSEI様と略す)
JR東日本管轄内の東京・小山エリア(東京、上野、田端、小山、那須塩原の5箇所に事務所を設ける)で、新幹線や駅のコンコースにおける清掃業務を担っています。
弊機構では、以前、TESSEI様に取材を行い、お客様に対する「おもてなし」の信念、そして社員同士で行う「エンジェルリポート」について、お話を伺いました。
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今回は、TESSEI様で働く社員同士の関わりについて、おもてなし創造部部長福田恭寛様と副課長の村上幸子様にお話を伺い、今後の企業の在り方を分析しました。
エンジェルリポート:社員同士で、業務内容等に関しての感謝や頑張りを褒め称える内容を綴る取り組みです。
-前回、エンジェルリポートの取り組みの概要を教えていただきましたが、その後個人内のみならず、貴社内全体で何か変化はありましたか?
福田さんエンジェルリポートの良いところは、人のことをよく見ることです。社員をお互いに褒め合う行為であるため、会社内で褒められたことがない人が、「認められたことがとっても嬉しい」と感じるようになっています。チームを20人で構成しているため、チームワークが上手くいくことに繋がります。また、人のことをよく見ることは、お客さまが望んでいることに応えるための感性を養うことに繋がるとも考えています。
また、コロナ禍の今でも、手書きで取り組んでいます。 みんながパソコンを持っているわけでもなければ、入力するための時間を割いているわけでもないので、時間がある時に書くようにしています。また、年代や性別に関係なく、気が付いたら書くようにしています。
手書きのエンジェルリポート
-働いている方は、年齢層が高いように感じますが、再雇用や退職された方の新規雇用などを行っているのでしょうか?
福田さんまず、弊社は新卒採用を行っていません。欠員が生じたときにパート募集をかけていて、色々な世の中を渡ってきた人が働いており、平均年齢は52,53歳です。
加えて、以前は45歳以上の人しか社員試験を受けることができなかったのですが、現在は入社1年後に社員受験資格を得られる制度になり、近年は、若い方も多くなってきています。
村上さん昔は女性のパートの方が多く、私自身もそんなに長く務めるつもりではなったのですが、制度が変わったことで、社員試験を受けました。以前の制度は、45歳以上で現場長の推薦も必要だったことから、技術を持っていても途中で辞めてしまう事が多かったのですが、現在はやる気のある人が社員になって長くTESSEIにいてもらえるようになりました。
在留外国人の雇用も行っていて、中国、韓国、フィリピン、台湾、ミャンマー、フィリピンの方が働いています。
-年齢層が高めの人や、外国にルーツを持つ人に仕事を教えるときに、どのような工夫を行っていますか?
福田さん東京駅では新幹線の折り返しの時間は12分間しかなく、清掃時間に関しては7分間しかないため、いきなり現場で仕事を覚えるのは大変なので、田端サービスセンターに新幹線の車内を再現した100席分の研修室を作り、採用時に4日間の研修期間を設けて、訓練を行っています。
モチベーションを高めるために、タイム計測などを行うこともあります。しかし、それよりも、テーブルクロスの絞り方を知らない人がいる為、基本作業から動線などの確認を行い、現場に出たときに困らないようにしています。
-20人で1つのチームを作られていると伺いましたが、構成要員の年代は決まっているのでしょうか?
福田さんバラバラであり、若い責任者もいれば、高齢の責任者もいて、様々です。
新幹線の清掃チームは、このチームに加え3人のグランクラス車両の清掃員で構成されています。今後、このチームの構成は少しずつ変化させていきたいです。
-このチームで清掃作業などの仕事以外でコミュニケーションをとる機会はありますか?
福田さんチームの構成要員は一定期間で変えていて、スタッフルームでも毎日同じ席に座るのではなく、違う席に座ることで、様々な人と会話ができるような工夫を行っています。
-外国人の方が働きやすいような工夫を行っていますか?
福田さん特に外国人だからと言って、日本人の輪に入れない訳ではないし、中国人の従業員の方は、中国人のお客さまがいらっしゃったら、中国語で対応したりという、積極性もあります。コロナ禍の前は多くの外国人観光客がご利用されていたので、対応はとても良い対応をしていました。
研修センターでの研修風景
-最後の質問になります。TESSEI様の会社の中で、更なる多様性が望まれる未来で、「エンジェルリポート」以外でほかに考えられているお取り組みなどはありますか?
村上さんなかなか難しいのですが、コロナ禍が収まって、また多くのお客さまが新幹線をご利用して下さるようになった時のために、今、サービス介助士の資格取得を進めています。駅のサポートの面や、色んな年代のお客さまが新幹線をご利用されることを考慮した清掃業務の更なる発展のために、今は準備期間として、資格を取得した社員同士が、得た知識を広める取組みを考え行動しています。
今回は、TESSEI様の社員同士のかかわりについて取材しました。IXラボでは、今後の不安定で、不確実性の持つ社会の中での企業の在り方について、様々な企業を通して研究を進めています。IXラボには、「パーパス」、「多様性を活かし合う」、「無意識の偏見に気付く」、「心理的安全性を確保する」、「ビロンギング(帰属意識)」といった、5つの指針があります。
ビロンギング(帰属意識)別のウィンドウで開く
TESSEI様では、「エンジェルリポート」の取り組みで、社員同士を褒め合い、認め合うといった心理的安全性を確保することや、ビロンギングを高められるような環境づくりをすすめ、さらに、お客様が何を要求しているのかについても考えられる人材を育成しています。他にも、社員制度の変更や、高齢の方の再雇用、在留外国人の方の雇用を行うことで多様性を活かし合う工夫もなされています。 今回の取材を通して、会社・企業は、社会情勢を考慮しながら日々変化していくことで、より良い発展を望まれると考えました。企業と社会を別々に考えるのではなく、連携していくことが今後の社会には必要となっていくでしょう。また、社員同士での分け隔てのない、関わり合いを大切に持つことで、日々の業務が楽しいものへと変化するのではないのかと考えます。TESSEI様では、新型コロナウイルス感染拡大が終息を迎えたら、多くの外国人観光客など多くの新幹線利用者がまた戻ってくることを考え、更なる努力を、内部組織での社員同士での工夫を通して、積み重ねています。企業内で行っていることが社会でも発揮されること、また社会で行っていることが企業内で発揮されることがあります。その点に注目することで、今後の不確実性な社会でも人々が支え合いながら生きていくことが可能になるのではないのでしょうか。
今回取材にご協力いただいた、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI様、ありがとうございました。
ライター・上村明日香 新潟県見附市出身。
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科に在学中。
観光と福祉に興味を持ち、日々勉学に励んでいる。