2030年までに全世界で目標達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)では、“誰一人取り残さない(Leave no one behind)”をスローガンに進められています。
今後の様々な社会変動・環境変動があっても、持続的に発展するためには、日本においては災害を念頭においた社会作りが欠かせません。
災害と隣り合わせの日本で、防災がSDGsとどのように関わっているかご紹介していきます。
日本は災害大国であるということは繰り返しお伝えしていますが、国土面積で言うと世界全体でわずか0.25%しかない日本が、どれほど災害とSDGs・持続可能な発展とを切り離すことができないかということを内閣府の「平成26年度防災白書(外部サイト)」から見てみましょう。
SDGsと防災を知るために「仙台防災枠組2015-2030」についての理解が大切です。
仙台防災枠組2015-2030(以降 仙台防災枠組)は、2015年に宮城県仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で採択されました。
国連防災世界会議とは国連加盟国187の国の代表らが参加し、世界的に災害への取り組みを決める会議で、これまですべて日本で開催されました(1994年横浜 2005年神戸 2015年仙台)。
第3回の国連防災世界会議では障害者と防災について大きく扱われ、これが誰も置き去りにしない“インクルーシブ防災”の提唱につながっています。
参考記事インクルーシブ防災とは?-「誰も取り残さない」防災について考える-(別のウィンドウで開く)
仙台防災枠組は以下のようなことについて触れられています。
災害の死亡者数だけでなく、経済損失や重要インフラの損害、災害リスク情報へのアクセスなどをターゲットに、地球規模の目標が設定されました。
災害前のリスクへの教育や対処が災害発生後のより速い復興と高い費用対効果があり、災害後の早期復旧や更なる災害リスクの削減や防止につなげます。
取り組み対象を国や自治体だけでなく、障害者・高齢者含む市民、企業にも求めています。
仙台防災枠組はSDGsと以下のような部分で関連しています。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
グローバル指標1.5.3 仙台防災枠組2015-2030に沿った国家レベルの防災戦略を採択し実行している国の数(指標11.b.1及び13.1.2と同一指標)
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
SDGsでは“強靭性(きょうじんせい)/ レジリエンス(resilience)”という言葉がでてきます。
では逆に災害に対する“弱さ”とはどのように決まるのか考えてみましょう。
災害による被害の大きさは以下の3点の関係性により変化します。
災害の被害・リスクの大きさ=ハザード×曝露×脆弱性
地震(ハザード)が発生した際に、
などの関係により同じ地震であっても被害は大きく変化します。
このような脆弱性は社会環境が影響しますが、社会の多くの部分がマジョリティ / いわゆる健常者にあわせて作られているため、取り残されてしまっている障害者などのマイノリティの人たちは、災害に対して脆弱性を多く持たされてしまっています。
SDGsや防災においてはこの脆弱性を改善すること、レジリエンスを高めることが重要な点と言えます。
SDGsと防災の関連は大きく分けて2つの視点があります。
この視点からSDGsについて考えていきます。
貧困や障害により社会のセーフティネットから逸脱してしまい、災害や大きな社会変動により、貧困に陥ってしまうことがあります。
災害時で言うと、障害により避難が遅れて命を落としてしまうリスクや、災害そのものの被害は免れたものの、その後の避難生活が加齢や障害、慢性疾患などを考慮されていないために災害関連死を含めた深刻な影響が出るなど災害に対する脆弱性が増加します。
災害時の水の確保の重要性は誰しもが分かりますが、それと同じ重要性が災害時のトイレにはあります。
出口が確保されないと、入口から入ってくるものを制限する心理が働きます。
トイレがないことで食事や水分補給を控えて脱水症状や免疫低下、エコノミークラス症候群のリスクの増大などに繋がります。
トイレの利用は一人当たり1日5回、東日本大震災では自治体による仮設トイレの設置は7割近くが4日以上要しています。
個人や家庭においては携帯トイレの人数分の数日分の備蓄などは欠かせません。
自治体や企業においては多様な人を考慮した災害時トイレの確保が重要です。
東日本大震災を経験した障害者は、避難所のトイレが和式トイレであったり、手すりがなく利用できない、車いすで入るスペースがない、トイレまでの移動の導線が確保されていない、などバリアフリー対応がなされていないために、避難所へ行くことを断念した人も多くいます。
関連記事3.11東日本大震災から10年 障害者の経験から防災を考える①- 福島で被災した車いすユーザー -(別のウィンドウで開く)
SDGsへの防災に対する取り組みやレジリエンスのある街や組織であるためにも災害時に備えたトイレを確保するだけにとどまらず、多様な人を置き去りにしないインクルーシブな対策が不可欠です。
この目標では前述の仙台防災枠組に沿った防災への取組み実行がターゲット11.bで触れられています。
災害のリスクを理解するためにはハザードマップなどを参考に、災害によってどのようなリスクや被害になり得るかを理解することや、高齢者や障害者など避難の際に何らかの配慮を必要とする“避難行動要支援者”も想定した防災訓練やワークショップの実施などによる防災教育の実施などがSDGsにおける防災の取り組みとしてつながります。
防災介助士の講習から災害そのもの理解だけでなく、避難行動要支援者の応対など、“知る” “守る” “助ける”をまとめて学ぶことができる実践的な外部研修を利用することで災害に強い組織体・事業継続へとつなげることもできるでしょう。
冒頭でお伝えした通り、日本は面積としては小さいにもかかわらず、多くの自然災害が日本で発生しています。
近年では大雨が各地で発生し、観測史上最大の降水量を記録した地域が多数あります。
この中のターゲットで「気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能」とあります。
様々な気候変動の中で、何故それが起こるのか、どのように取り組めばいいのかを考え持続可能な社会の担い手を育てる「持続可能な開発のための教育(通称ESD:Education for Sustainable Development)」という教育活動があります。
例えば子ども達へのESGにおいても、SDGsと災害、そして障害者など多様な人を置き去りにしない防災についても学ぶ必要があります。
持続可能な開発・発展とは災害や社会変動も念頭に、事業やサービスを構想することに他なりません。
SDGsから社会課題と事業との関連性を考えて取り組むことの中には、このように災害などの社会変動に強い組織体への進化にもつながります。
ここではSDGsと防災の取組みの関係性について紹介していきました。
日本においては災害時においても誰一人取り残さない防災への取組がSDGsへのコミットメントへと続きます。
誰一人取り残さないことの前提として、社会に暮らす多様な人への対応、ダイバーシティ&インクルージョンが重要です。
日本ケアフィット共育機構では、防災介助士でSDGsと防災の取組みで必要な学びを提供していますが、防災介助士の資格取得や研修の他にも、様々なコンサルティングを提供しています。
SDGsと事業との関係、報告など課題を抱えることもまずはお気軽にお問い合わせください。