SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連で採択された2030年までに全世界で達成を目指す国際的な目標のことです。
社会性の強いテーマであることから、SDGsに対する企業の取り組みは
と認識する方もいるかもしれません。
しかし“持続可能な開発”とあるように、SDGsへの取り組みは企業の継続性にも深く関わります。
SDGsの取り組みの際に、多くの企業が関連するのは高齢化に対する取り組みです。
高齢者の人口が全人口の29.1%(2021年9月総務省)になる超高齢社会の日本では、高齢化への対策と取り組みが企業の生存戦略にもつながります。
ここではSDGsの取り組みと超高齢社会がどのように関わるかご紹介します。
超高齢社会、高齢化社会、など似たような言葉が混ざって使われています。
国により高齢者の定義は異なることはありますが、一般的にWHOや国連などの定義では65歳以上の人を高齢者とし、その高齢者が全人口に対してどのくらいの比率なのかによって、社会の高齢化が定義されています。
一般的には以下のような割合で区分されます。
現在の日本の高齢化率はというと、29.1%です(2021年9月総務省統計局)。
日本は1970年にすでに高齢化社会を迎え、2007年、世界に先駆けて超高齢社会に突入しました。
人口推移や将来推計など様々な資料をもとに、SDGsのゴールである2030年までに日本社会はどのようになるか紹介します。
出典:内閣府 令和3年 高齢社会白書(PDF)(外部サイト)
団塊の世代(1947-1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になり、2180万人に達する
参考:国立社会保障・人口問題研究所 平成29年 日本の将来推計人口(外部サイト)
このように、日本は高齢者が増えていくことが明白となっています。
現状の社会のあり方のままでは、例えば年金や介護などの社会保障の支出や、社会における居場所作りなどにおいて様々な課題が生まれてくることが考えられます。
それらの課題を解決するサービスや、今後高齢者が増えることを見越したビジネスの構築が重要となってきます。
SDGsには17の目標と169のターゲットがありますが、高齢者・社会の高齢化に対して明確に対応している目標はありません。
高齢者という文言が明記されているのは169のターゲットのうち下記になります。
ターゲット2.2
5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
ターゲット11.2
2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
ターゲット11.7
2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
ただし、SDGsは“誰も置き去りにしない”をスローガンに掲げているので、直接的に表現がなくても以下の目標が高齢者と関わってくるでしょう。
ここでは強靭性(レジリエンス)や脆弱(ぜいじゃく)性 / 層といった言葉が出てきます。
災害を含めた社会変動に際しての高齢者への対応や、社会保険制度・金融など基礎的サービスのアクセスが高齢者に対して確保されているか、といったことが企業の取り組みと関係してくるでしょう。
例えば、コロナウィルスにより、従来のサービスが大きく変わり、オンラインによるサービスが普及しました。
こういった取り組みが高齢者もカバーしているか検討できます。
金融機関であれば高齢者への資産形成や、認知症の人を含めた高齢者が安心して利用できるサービス・接遇などがつながるでしょう。
ここでは飢餓の他に、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処について触れられています。
厚生労働省の調査によると、高齢になるほど低栄養傾向(BMI≦20㎏/㎡)が増加しています。
高齢者の低栄養の要因には、心身機能の低下もありますが、社会・環境の要因も考えられます。
例えば、食材を購入する店舗へのアクセス、食品表示の見やすさやスタッフの応対なども影響します。
他にも高齢者が食べやすい加工食材の開発、配食・宅配サービスなども今後の社会では重要になってくるでしょう。
この中では「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」について触れます。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のことを言います。
参考:厚生労働省(外部サイト)
日本のUHCの代表的な取り組みとして、国民皆保険制度による社会保障があたります。
企業や自治体の視点から見てみると、例えば高齢者の医療機関へのアクセス向上のための輸送やバリアフリーの取り組み、高齢者にも分かりやすい医薬品などの情報提供、保険商品の案内などが関係します。
近年「リカレント教育」という言葉が注目されています。
リカレント教育とは、学校教育を終え、社会人としての様々なタイミングで、求められる能力やスキルを身につけるための学びのことです。
学び直し、とも言われ、生涯学習のひとつです。
人生100年時代において何か1つの技能だけで通用することは難しく、社会で求められる知識や技能は全く異なってきます。
社会の高齢化が進むことで、人生の途中で働きがいや生きがいを見出すための高齢者への学習機会の提供や、少子化で労働力が危惧される中で高齢な従業員に対する教育の提供など、今後、超高齢社会の日本において重要になってくるでしょう。
この目標における高齢者への取り組みが多くの企業にとって重要な課題となってきます。
少子高齢化により、人手不足が懸念される中で高齢者の活躍への期待や、高齢者雇用促進法により希望者の65歳までの定年延長など、高齢者の働きやすい環境作りが求められています。
また、ここでは金融サービスへのアクセス促進についても述べられています。
加速するデジタル化において高齢者も理解しやすいサービスや案内になっているかなど、高齢者が多数となる社会においては重要なカスタマーサービスとなります。
経済発展と生活を支えるためのインフラを構築することについて言及されています。
例えば災害が発生することで、交通インフラが損なわれることで、生活に多大な影響が出るため、災害にも強いインフラ作りが求められます。
また、地域によっては移動手段が限定されることで、高齢者の生活や、目標8につながるような高齢者の働きがいにおいても大きな影響が出ます。
ターゲット10.2.1の指標にある相対的貧困率にあるように、高齢者の相対的貧困率は上昇しています。
高齢者の貧困が進むことで、消費や社会活動が抑制されてしまいます。
その他の目標への取り組みと連動しますが、高齢者の経済格差や貧困の解消は企業活動の活性化にも影響します。
この目標では多方面で高齢者の生活に関わるターゲットが設定されています。
公共交通機関のバリアフリー化は超高齢社会においては欠かすことのできない取り組みであり、その他にもコミュニティバスやパーソナルモビリティなど高齢者の移動に寄与するサービスは様々な形で必要となってくるでしょう。
また、この目標では災害についても言及されています。
言うまでもなく日本は災害大国であり、過去の災害においては、高齢者や障害者の死亡率や災害関連死の割合が高くなっております。
これには心身的な機能制限が原因となるだけでなく、多様な人を想定した災害対策がなされているかどうかといった社会要因も大きく関わります。
これまで説明してきた超高齢社会おける様々な課題は、1自治体、1企業、1個人で解決できるものではありません。
様々なステークホルダーとの協働が重要ですが、高齢者がその担い手ともなりえます。
様々な経験や知見を共有することで持続可能な超高齢社会となります。
日本ケアフィット共育機構では高齢者に関する知見をもとに、様々な企業・自治体とともに超高齢社会の課題について取り組んでいますが、それぞれの強みを活かしあうことで持続的な発展に寄与できると考えています。
これまでそれぞれの目標と超高齢社会との関連性をお伝えし、企業活動についても説明しました。
SDGsに対してどのように取り組めばいいのか分からない、といった企業であっても、高齢者と全く関係がないという企業を見つけるほうが困難、とまで言えます。
高齢者という“人”に着目すると、SDGsの取り組みと事業の持続的発展とのつながりが見えてくるでしょう。
企業の雇用に関して言えば、事業継続していくことで、従業員の勤続年数もあがり、従業員が高齢化していくことも考えられます。
また、従業員の家族にまで範囲を広めると、親・家族の高齢化が進み、そのケアにあたる従業員も出てきて、十分な対策が行われないと介護離職などのリスクも出てきます。
顧客・お客さまに関しても従業員同様、関係性が長く続けば高齢化が進みます。
地域に根差したサービスを行う企業、幅広く発信・展開する企業ともに高齢者の特性を理解することが重要です。
高齢化によるニーズの変化などにも対応する必要があるでしょう。
人口における高齢化率は地域によっては30%を超える地域もあります。
高齢者と地域特性を考慮に入れ、企業や自治体、地域住民と連携した取り組みが重要になってきます。
SDGs全般に対しての企業の取り組み方法については別の機会でご紹介しますが、ここでは超高齢社会を観点に企業が最初に行いたいポイントを最後に紹介します。
ジェロントロジー(老年学・創齢学)を学びの核とするサービス介助士では、高齢者の加齢による変化についてお伝えし、実技教習では高齢者疑似体験も行い、どんな環境により不便さを抱えているかを実感することが可能です。
サービス介助士の学びから高齢者について理解を深めることができるのです。
その企業の存在に、どのような人が関わっているか改めて整理してみましょう。
上記でも伝えている従業員、顧客、地域社会など、様々な観点から関係者を洗い出し、今後の高齢化が事業の持続的発展にどのような影響があるか考えることができます。
SDGsの内容には様々な項目で“アクセス”について触れられています。
店舗であれば物理的なバリアの見直しは当然のこと、ウェブサイト、サービス説明など、企業の提供するサービスへのバリアフリーを含めたアクセシビリティの向上は高齢者への訴求を改善できる要素になります。
SDGsは様々なところ注目されていますが、高齢化という観点でお伝えしました。
SDGsは、2030年という未来から逆算して、今から取り組むべきことを決める“バックキャスティング思考”で考えられています。
より加速する社会の高齢化において、SDGsに企業が取り組むことで社会課題の解決と企業の持続的な発展の両立を図ることができます。
日本ケアフィット共育機構が認定・運営する資格である、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士はSDGsと超高齢社会において欠かすことのできない考えを学ぶことができます。
日本ケアフィット共育機構では、上記の資格だけでなく、SDGs推進の課題についてもパートナーシップを活かした支援をご提供しております。
関連ページ日本ケアフィット共育機構のSDGsへの取り組み(別のウィンドウで開く)
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