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地震や水害など日本は毎年のように災害が発生し、人々の生活におおきな被害を出しています。
その中では災害で亡くなる人もいますが、災害の直接的な被害により亡くなる方だけでなく、発災直後は危機を免れても、その後の避難生活などにおいて亡くなる“災害関連死”もあり、その多くが高齢者や障害者等の要配慮者・避難行動要支援者です。
高齢者・障害者等の要配慮者・避難行動要支援者の特性や応対については、防災介助士別のウィンドウで開くで詳しくお伝えしていますが、今回は災害関連死とは何か?なぜ高齢者障害者の割合が多いのかを東日本大震災や熊本地震のデータから紹介します。
地震による建物の倒壊や津波などによる直接的・物理的な原因で亡くなるのではなく、災害による負傷の悪化や避難生活等の身体的負担による疾病で亡くなることを指す、いわゆる災害関連死の概念は1995年の阪神淡路大震災を機に生まれました。
震災にともなうものを特に震災関連死と呼ぶこともあります。
令和2年版防災白書によると、平成31年4月時点での政府としての「災害関連死」の定義は以下のようになっています。
〇災害関連死:当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和 48 年法律第 82 号)外部サイトに基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの(実際には災害弔慰金が支給されていないものも含めるが、当該災害が原因で所在が不明なもの(行方不明者)は除く。)
令和2年版防災白書 http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/index.html外部サイト
第1部 第1章 第1節 自助・共助による事前防災と多様な主体の連携による防災活動の推進 内の【コラム】「災害関連死の定義について」より
明確に定義されたことにより、過去の災害も含めこれまで いわゆる災害関連死 とされていたものの実態がより正確に把握されることが期待されます。
一方、災害弔慰金の支給は市町村(特別区を含む)が主体となって行うとされており、自治体によって差が出ているという指摘もあるようです。
また、自治体に申請を行っていない場合もあるため、実際の災害関連死は自治体や省庁が発表するデータよりも多いと考える向きもあります。
災害発生後の様々な環境変化により以下のようなケースがあります。
慣れない避難生活により心身にストレスがかかることや、避難所などで同じ姿勢が続いたり、体を動かすことが少なくなることで健康状態が悪化し亡くなることが多いです。
熊本県の発表によると熊本地震による死者数は273人で以下のような内訳です。
| 50人 |
---|---|
| 218人 |
| 5人 |
合計 | 273人 |
参考:熊本県「平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について【第 311 報】」
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/132379.pdf外部サイト
ここから分かる様に熊本地震では地震による直接的な被害で亡くなる人よりもはるかに多い人数の人が災害関連死で亡くなっています。
上記のデータと参考とするものは若干異なりますが、熊本地震の災害関連死の内訳を見てみましょう。
平成29年12月時点での熊本地震の災害関連死(震災関連死)は197名でした。
参考:熊本県「震災関連死の概況について(H30年3月12日)」
https://www.kumamoto-archive.jp/post/58-99991jl0004fg2外部サイト
死亡時の年代はこのような内訳です。
(表は横スクロールしてご覧いただけます。)
0-9歳 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | 90代 | 100歳以上 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 2 | 1 | 0 | 4 | 1 | 9 | 27 | 41 | 70 | 39 | 3 | 197 |
割合 | 1.0% | 0.5% | 0.0% | 2.0% | 0.5% | 4.6% | 13.7% | 20.8% | 35.5% | 19.8% | 1.5% |
70代以上が153名となり高齢者が8割以上を占めていることが分かります。
死因が呼吸器官系・循環器関係の疾患、内因性の急死・突然死とあることから、高齢者の生活環境の変化が災害関連死に大きくかかわっているといえます。
東日本大震災は発生から10年経過し、その間に省庁や自治体など、様々な報告データができました。
災害関連死についても若干のデータに違いはありますが紹介していきます。
死者 | 15900人※ |
---|---|
行方不明 | 2523人※ |
2022年3月10日 警察庁(外部サイト)
※2022年3月11日更新
大規模災害への対応の現状と課題
~東日本大震災から10年を迎えて~(警察庁)外部サイト
平成27年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2015/zenbun/pdf/1s2s_6_7.pdf外部サイト)の報告をもとにすると、約16000人の死者のうち約10000人が60歳以上になります。
NHKが行った被災自治体への調査(https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/19/data_shiboritsu.html外部サイト)によると東北3県の人口2401955人のうち18829人が亡くなっており、死亡率が0.78%であるのに対し、障害者(障害者手帳所有者)は人口115859人のうち1658人が亡くなり、死亡率は1.43%です。
東日本大震災における障害者の死亡率は一般的な死亡率の約2倍となっています。
東日本大震災の震災関連死者数 | 3784人※ |
---|
2021年12月27日 復興庁(外部サイト)
※2022年3月11日更新
東日本大震災における震災関連死の死者数 (令和2年9月30日現在調査結果)(復興庁)外部サイト
東北3県(岩手・宮城・福島)で震災関連死 66歳以上の高齢者の内訳を抽出しました。
(表は横スクロールしてご覧いただけます。)
都道府県 | 震災関連死者数(人) | 66歳以上(人) | 66歳以上の割合 |
---|---|---|---|
岩手 | 470※ | 405※ | 86.1% |
宮城 | 929 | 809 | 87.0% |
福島 | 2329※ | 2094※ | 89.9%※ |
※2022年3月11日更新
このデータから分かる様に熊本地震と同様に東日本大震災においても災害関連死の多くを高齢者が占めています。
共同通信のアンケート(https://jp.reuters.com/article/idJP2020030101001995外部サイト)によると東日本大震災の震災関連死における障害者の割合は24.6%となっています。
年齢から高齢な障害者もいることは考えられますが、災害による死者・災害関連死のデータから高齢者と障害者が甚大な影響を受けることが分かります。
これまでのデータを振り返ると高齢者・障害者の災害時の被害はより一層大きいことが分かりました。ではなぜなのか?を挙げていきます。
高齢者や障害者、妊産婦、幼児、外国人など災害時に配慮が必要な人を「要配慮者」と呼び、「災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な方であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要する方」を災害対策基本法で「避難行動要支援者」と定義されています。
ではなぜ高齢者・障害者等の避難行動要支援者は災害における被害が大きいのでしょうか?
災害による被害やリスクの大きさは、以下の3つの要素の関係性で変化します。
例えば、地震や火山が無人島で発生しても災害にはなりません。
人間の生活に関係して初めて災害となります。
同じ大雪という自然現象(ハザード)であっても、めったに雪が降らない都市部での大雪と、 豪雪地帯の大雪では、その影響の度合いは異なります(地域の脆弱性)。
豪雪地帯であっても大雪が長期間に渡れば(曝露)、深刻な被害となります。
また、同じ地域であっても、そこに住む人の年齢や障害、状況により影響が変わります。
このように自然現象などのハザードが災害になるかどうか・被害が大きくなるかどうかは、ハザードの程度 / 曝露とハザードに対する弱さ / 脆弱性が大きな要因であるということが分かります。
脆弱性には様々な捉え方ができます。
例)
人の脆弱性について紹介しましたが、災害での被害の原因を“高齢者だから” “障害者だから”と言えるでしょうか?
災害関連死の要因でも挙げたエコノミークラス症候群は、避難所などの環境が整っていないために起こるものです。
災害情報が音声でしかないために被災した聴覚障害者もいます。
このように考えると被災の原因は社会の作りにある、と捉えて、“障害は社会が作り出す”という障害の社会モデル別のウィンドウで開くの考えは災害においても当てはめることができます。
高齢者・障害者の災害についての記事掲載にあたり、様々なデータを調べました。
その調査から、
といったことが分かってきます。
防災介助士別のウィンドウで開くの学びでは、災害や脆弱性についてだけでなく、高齢者・障害者等要配慮者への応対について実技を織り交ぜてお伝えしています。
その中で、音声でしか伝えていない緊急情報、健常な人しか使えない避難所のトイレ、など、社会の作りが災害時のリスクを大きくしていることに気づくことができます。
災害が頻繁に発生する日本だからこそ、誰も取り残さない・置き去りにしないインクルーシブ(包摂的な)防災が重要です。
日本は65歳以上の高齢者の割合が全人口の28%を超える超高齢社会です。
超高齢社会において高齢者の災害関連死の問題は社会や地域において早急に取り組んでいかなければならない問題です。
多様な人が暮らす地域・社会においては、ライフステージに合わせた防災の対策が必要です。
小さな子どもがいる家庭では、防災の備蓄や対策も異なります。
高齢になれば避難の方法や準備も体調や環境に合わせた対策が必要になります。
超高齢社会の日本では防災においてもジェロントロジー(創齢学/老年学)の観点を取り入れ、誰もが住み続けられるまちづくりが求められています。
加齢は誰にでも関わることであり、高齢者・障害者の災害関連死の問題は一人ひとりにつながっています。
防災介助士の学びから災害や高齢者・障害者の防災の課題を自分事としてとらえて、誰も取り残さないインクルーシブな防災を目指しましょう。
防災介助士では、災害とは何か、を学び、高齢者や障害者など、災害時に配慮を必要とする、避難行動要支援者への応対について学ぶことができます。
防災においても忘れがちな多様な人への対応、バリアフリー対応についてしっかり備えておきましょう。
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