0152018 Spring

子どもと親が共に育つ、優しい社会のつくりかた【前編】

掲載日:(対談日:2018-01-16)

杉山さんと内村さん

日本ケアフィット共育機構が発行するフリーペーパー『紲 Kizzna』本誌で企画された、元プロテニスプレーヤー杉山愛さんの母でありコーチの杉山芙沙子さんと、体操選手内村航平さんの母、内村周子さんへのインタビュー。杉山さんが代表を務め、内村さんが体操教室の講師を務める「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと”」で伺ったお話しのうち、本誌に収まりきらなかった部分を、前後編に分けて掲載していきます。(対談日:2018年1月16日)

杉山さん

一般社団法人 次世代SMILE協会 代表理事
渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと” 代表

杉山 芙沙子(すぎやま ふさこ)さん

内村さん

スポーツクラブ内村 コーチ
渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと” 講師

内村 周子(うちむら しゅうこ)さん

障がいのある子どもとどう向き合うか

ーー本誌で内村さんから「障がいがあってもなくても、その子を理解して抱きしめてあげることが大事」という言葉をいただきましたが、障がいのある子どもを持つ親御さんのなかには、どのように我が子と向き合えばよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

内村私が運営している「スポーツクラブ内村」に通うお子さんにも、障がいのあるきょうだいがいる子は多いです。でも最初は私、それを知らなくて。なぜかというと、親御さんが隠したがるんです。障がいのある人を見て心ないことを言う人もいますからね。でも自分の親が自分のことを隠そうとするなんて、そんな悲しい話ありますか?だから私、それからは一緒に連れてきてもらうようにしたんです。「同じあなたの子供でしょ?」って。自分で身体が動かせなくても、私の教室で見たり感じたりしてくれたらそれだけで楽しめるからって。

杉山親が知らず知らずのうちにバリアになること、多いですよね。私が参画している「異才発掘プロジェクト ROCKET」(※)に応募してくるお子さんのなかにも、異才を発揮する以前に、そもそも社会と接点を持った経験がなくて、このプロジェクトには対応できない子がいるんです。それで面接で落とされてしまう。すると親は「なぜです?」と聞いてくる。自分がバリアになって、社会になじませる練習をさせていなかったことに気づいていないんです。そうした心のバリアがない状態が普通になることが、ダイバーシティ社会の基本になってくるのではないでしょうか。

内村「普通」という言葉って、障がいのあるお子さんの親御さんにとってはすごく嬉しいんですよね。私も「周子さんはうちの子にも普通に接してくれる」と声をかけてもらえることがよくあります。でも、私も最初からそんな振る舞いが自然にできていたわけではなくて、いろいろな子と接する経験を積むことで、より深く理解できたんです。人やものごとと接する経験ってすごく大切ですよね。

杉山「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと”」でも、ダイバーシティ社会を見据えて、障がいのあるお子さんに参加してもらえるプログラムやパラスポーツの体験会も開催しています。障がいのあるなしにかかわらず、また子どもだけでなくお父さん、お母さんにも「スポーツって、工夫すればこんなに楽しいんだね!」と思ってもらえるようになることも、私たちの大きな役割ですね。

【後編に続く】

※異才発掘プロジェクトROCKET: 突出した能力はあるものの、現状の教育環境に馴染めず不登校傾向にある小・中学生を選抜し、継続的な学習保障および生活のサポートを目的として、2014年12月に日本財団と東京大学先端科学技術研究センターが設立したプロジェクト。ROCKETはRoom Of Children with Kokorozashi and Extraordinary Talentsの略。

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