03バリアフリー

心のバリアフリーへの企業の取り組み事例 観光関連企業での活用事例

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心のバリアフリーへの企業の取り組み事例 観光関連企業での活用事例?

改正バリアフリー法により、バリアフリー適合基準の対象範囲の拡大や、ソフト面でのバリアフリー対策の強化だけでなく、事業者によるバリアフリー対策に関する情報提供を促進することが盛り込まれました。

これに関連する取り組みとして、観光庁から宿泊施設のバリアフリー関連の情報発信促進のために「観光施設における心のバリアフリー認定制度」が創設されました。

サービス介助士などの資格取得をしている事業者様においては、既存の取り組みを活用しつつ、社内の心のバリアフリーを推進するきっかけにもなりますので、ここで認定制度と取り組みをお伝えします。

観光施設における
心のバリアフリー認定制度とは?

観光施設における心のバリアフリー認定制度は、観光庁が観光施設のバリアフリー情報発信の促進のために創設した制度です。
その背景には、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)外部サイトの改正があります。

改正バリアフリー法は2018年11月に制定され、2020年6月に一部施行、2021年4月に完全施行されました。
この改正でバリアフリー基準適合義務に公立小中学校やバス乗降のための道路施設など対象の拡大や、公共交通事業者がバリアフリー設備の機能を十分に発揮するための役務提供のためのソフト基準の遵守などが定められました。

参考:国土交通省外部サイト

その中で障害者等への観光施設(宿泊施設・飲食店等)の情報提供を促進についても定められ、この一環で観光施設における心のバリアフリー認定制度(以下心のバリアフリー認定制度)が始まりました。

観光庁 観光施設における心のバリアフリー認定制度外部サイト

後ほど説明する対象者が基準を満たし申請し、認定されると認定マークが配布され、今後、観光庁のウェブサイトで公表されます。

そもそも心のバリアフリーとは?

認定自体は基準を満たせば申請自体は可能ですが、その前に心のバリアフリーとは何かを理解することが重要です。
心のバリアフリー認定制度創設の背景には改正バリアフリー法がありますが、改正バリアフリー法の背景には、「ユニバーサルデザイン2020行動計画(以下UD2020行動計画)」があります。

ユニバーサルデザイン2020行動計画

UD2020行動計画は、東京オリンピックパラリンピックを契機に共生社会実現のために、ユニバーサルデザインと心のバリアフリー推進を目指し設置された、ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議において決定された、具体的施策が記されたものです。
ユニバーサルデザイン2020行動計画外部サイト

このUD2020行動計画において、心のバリアフリーには以下3つのポイントが重要であると述べられています。

  • 障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
  • 障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
  • 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。

心のバリアフリーの問題点

心のバリアフリーの問題点として、社会の多くの人が“心のバリアフリー”という言葉から、慈善的精神や、障害者へのいたわりの気持ちといった印象だけが先行して、そういった思いやりを促す取り組みに安易にいってしまうことです。

心のバリアフリーというものは、個々人の心の持ちようだけではなく、UD2020行動計画で示しているような3つのポイントを捉えた取り組みをすることが心のバリアフリー認定と、社内推進にとっても重要です。

ポイント①で触れている「障害の社会モデル」に関しては、こちら別のウィンドウで開くの記事で説明しています。

対象となる事業者

心のバリアフリー認定制度の対象となる事業者は3つの観光施設になります。

  • 宿泊施設
  • 飲食店
  • 観光案内所

宿泊施設、飲食店、観光案内所

厳密には営業許可や届け出の有無などが必要になりますので観光庁のウェブサイト外部サイトからご確認ください。

認定基準

認定のためには、対象となる施設であり、かつ、これから説明する3つ全ての基準を満たす必要があります。

①施設のバリアフリー性能を補完するための措置を3つ以上行い、高齢者、障害者等が施設を安全かつ円滑に利用できるような工夫を行っていること

観光施設は不特定多数の多様な人が利用するため措置と対象となることも様々あります。
ごく簡単に以下のような措置が考えられます。

  • 車いすユーザー:段差を超えるための簡易スロープを用意
  • 視覚障害者:施設情報の音声データ、点字案内
  • 聴覚障害者:筆談ボードや呼び出しを把握できる室内信号装置の設置
  • 知的障害者:手順や確認事項を伝えるコミュニケーションボードの設置
  • 高齢者:浴室やトイレ個室の手すりの設置 など

上記の事例はハード面、ソフトツールでの対応の事例ですが、従業員が手話で対応することや、従業員が段差を越える介助の応対をする、といった人的対応もこの措置には含まれます。

②バリアフリーに関する教育訓練を年1回以上実施

①にあるようなバリアフリー機器への理解だけでなく、障害の特性やコミュニケーションのあり方、介助技術の習得、障害者差別解消法など関連法規の理解、など従業員に応じて浸透実践することが重要です。
日本ケアフィット共育機構が運営するサービス介助士などの資格取得や、施設での実地研修なども提供しておりますので、そのような外部研修も活用できます。

③自社以外のウェブサイトで施設のバリアに関する情報などのバリアフリー情報を積極的に発信していること

自社のウェブサイトにバリアフリーに関する情報を掲載することは当然ですが、多くのユーザーは旅行サイトなどを経由して観光施設を利用します。
そのような外部サイトにおいても自社の取り組みを発信することで、情報格差をなくし、より安心して利用いただけるような取り組みをしていきます。
また、重要なのが、施設のバリアフリー情報だけでなく、施設にどのようなバリアがあるかを発信することも利用にあたっての重要な判断材料になります。
例えば、車いすユーザーがホテルで入浴する際に、人によっては座りながら入浴できるシャワーチェアが必要になります。
そのような機器の有無や、トイレ内にある機能などを伝えることも重要です。

企業での心のバリアフリーの取り組みの進め方

バリアフリー情報発信の取り組みの流れは観光庁のウェブサイト外部サイトにも掲載されています。
ここではより実践的な取り組みとして進め方を紹介します。

①お客さまのニーズの理解(障害・ユーザー特性の理解)

バリアフリーの情報を発信するためには、どのようなバリアフリー情報が必要なのかニーズを理解する必要があります。
そのためにはまず、お客様のことを理解することが求められます。

  • 障害(バリア)とは何か?の理解:障害には環境要因と、個人要因があること
  • お客様の特性の理解:加齢による身体機能の変化、心身障害の特性など
  • 障害を理解したうえで、どのようなサービスを必要とされているかの理解

②現状把握・実施検討のための情報収集(施設のバリアや運営体制のチェック)

バリアフリー情報を発信するために施設内にどのようなバリアがあり、どのような対策がされているか確認していきます。
ここでは施設や備品といったハード面だけでなく、サービス提供や接遇(介助)の応対をする従業員の配置など運営体制を含めた情報をまとめます。
上記のウェブサイトにてセルフチェックのためのチェックシートがあるので参考にしてみましょう。

④実践・教育

ここでいう実践と教育とは、
①の障害理解や接遇(介助)の応対を身に付けるための研修の実施や、
②で集めた情報をもとに検討されたバリアフリー措置の実践となります。
このフェーズは断続的に進行・継続されるものなので1度にすべてできるものではありません。

④収集した情報・取り組みの発信

認定制度の基準の③に当たる部分です。
② ②で行った情報・取り組みを自社のウェブサイトやパンフレット以外だけでなく、外部のウェブサイトなどにも積極的に発信しましょう。
この時、バリアフリー情報だけでなく、施設にどのようなバリアがあるかということも掲示することが大切です。
また、情報発信については、ウェブ上にしか掲載されていないことや、実際に施設に行かないとその情報が取得できない、といったことがないように意識した発信をしていきましょう。

⑤実践後のフィードバック

取り組みの実施、情報発信したことで、お客様の施設利用にどのような変化があるか、などを検証・評価します。
可能であればお客様からご意見をいただくことが有効です。
また、お問い合わせの内容なども把握することで実施と発信の効果を検証しましょう。

⑥次の改善策の検討・実践(①に戻り検討)

検証の結果、この次に取り組むことを見直していきます。
このように、心のバリアフリーの取り組みは、プロジェクトの進行や、業務改善同様にPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルをまわすことが重要です。
この取り組み①〜 ⑥に障害当事者が参画することで、自分たちでは気づかないニーズや解決策を見出すことができることもあります。

まとめ

観光施設における心のバリアフリー認定制度をベースに心のバリアフリーの企業の取り組みについてお伝えしましたが、この進め方は観光施設だけでなく多くの事業者にとっても、自社のバリアフリー推進に役立てることができます。
日本ケアフィット共育機構では研修の実施の他にも、実地でのバリアチェックや、バリアフリープロジェクト推進の支援も行っております。
バリアフリーの推進は、セルフチェックやマニュアルだけでは自社内で進めることが難しいケースが多いです。
様々な障害当事者とのネットワークを活かして、規模や予算に応じたご提案をしております。

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公益財団法人日本ケアフィット共育機構

高齢者や障害者とのコミュニケーションや接遇(介助)、サービス提供のあり方を学ぶ資格「サービス介助士別のウィンドウで開く」は2000年から始まり、1000社以上の企業がバリアフリー施策、サービス向上、ダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組みとして導入しています。
企業として取り組むべき障害者差別解消法の理解や合理的配慮の浸透支援など、共生社会の実現に向けた様々な取り組みを展開しています。

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