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日本は高齢者人口率が28%を超える超高齢社会であると同時に、災害大国です。
高齢化と災害が合わさることで、災害直後だけではなく、その後の避難生活においても多様な人を想定した取り組みが欠かせません。
本記事では防災と社会の高齢化を考える防災ジェロントロジーについて紹介します。
ジェロントロジーという言葉を聞いたことがありますでしょうか。
ジェロントロジー(Gerontology)とは、ギリシャ語のgeron(老人)を語源とする英語のgeronto(加齢・高齢)に科学・研究を意味するlogyがついたものです。
一般的には「老年学、老人学、加齢学」などといわれています。
誰もが高齢社会における生活を快適に送れるように、高齢社会の課題や将来、加齢による身体面・心理面の変化、社会における高齢者の立場や生きがいなどについて、高齢化が進む中での様々な課題を研究する学問です。
公益財団法人日本ケアフィット共育機構では、これを「創齢学」と表現し、自分の齢(よわい)・人生を自分で創りあげるための学びとしています。
超高齢社会の日本において、自分の加齢をしっかり見つめ、長い人生をいかに生きていくかを考えるきっかけとしています。
そのことで自分が高齢になったときに過ごしやすい社会を作ることにつながっていくのです。
そして加齢を自分ごととして考えることが、誰もが高齢社会における生活を快適に送るために必要な世代間の共生、世代間の円滑なコミュニケーションの第一歩となるのです。
ジェロントロジーが求めれる一因は進行する超高齢社会にあります。
現在日本では65 歳以上を高齢者としており、人口の高齢化率とは、65歳以上人口の全人口に占める割合であり、65歳以上の高齢者の割合が7%を超すと高齢化社会、14%を超すと高齢社会、21%を超すと超高齢社会といいます。
総務省統計局の「人口推計」外部サイトによると、2021年の日本の総人口は、約1億2,521万人です。(令和3年9月1日現在(概算値))
そのうち、65歳以上の高齢者は約3,640万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は約29.1%です。
つまり4人に1人は高齢者であり、超高齢社会といえます。
さらに100歳以上の人は、1963年では153人でしたが、2021年現在では約8万人に増えています(厚生労働省」外部サイト)。
なお、90歳以上は200万人いるといわれており、高齢者の中でも特に高齢な方も増えていることがわかります。
また「ベビーブーム」と呼ばれた、第二次世界大戦後の1947~1949 年の3年間には、年間250万人を超える出生数がありましたが、第二次世界大戦後70年以上を経た現在、「団塊の世代」も65歳を超え、2025年には全員が75歳以上となり、2036年の高齢化率は33.3%で3人に1人が65歳以上になると推計されています(2018年内閣府外部サイト)。
さらに、平均寿命も延びており、2019年には男性81.41歳、女性87.45歳です(厚生労働省外部サイト)。
では、比較的平和で長寿の日本に問題がないかというと、健康寿命という数字があります。
健康寿命とは健康で自立した生活を送れる平均期間を推定したものであり、2016年の日本人の健康寿命は男女平均で男性72.14歳、女性74.79歳でした(厚生労働省外部サイト)。
この平均寿命と健康寿命の差から、晩年の約10年に何かしらの生活のしづらさを感じている人が多いということが分かります。
また、障害者の人数についてみてみると、内閣府(2019年)外部サイトによれば、日本の身体障害児・者(在宅・施設)は436万人(人口1,000人あたり34人)、知的障害児・者(在宅・施設)は約108万2,000人(同9人)、精神障害者(在宅・施設)は約419万3,000人(同33人)。
国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有していると言えます。
以上から、高齢者と障害者を併せて考えると、生活の困難さを感じている人は人口の10%以上にのぼると考えても、何ら不思議ではありません。
このような社会状況において、「昭和61年版(1986年)防災白書」に「災害弱者」という概念が公的に使われ始め、この中で「災害弱者は人口の約22%にあたる約2,700万人に達すると推計し、今後、国際化・高齢化が進むにつれて外国人や高齢者の数は増加し、災害弱者の数もますます増加していくものと思われる」と発表しました。
「防災白書」外部サイトによると、1995年の阪神・淡路大震災では亡くなった人の半数以上が65歳以上でした。
また、避難生活では、高齢者や障害者にとってはさらに過酷であり、その事実がマスメディアを通して伝えられたり、支援するボランティアなどの実践的な活動を通してその問題の深さが明らかになりました。
さらに、2004年に発生した新潟県中越地震では、過疎化・高齢化した地域での災害であり、道路の寸断によりたくさんの小さな集落が孤立する事態となりました。
また避難したとしても、避難生活の間に睡眠不足や水分摂取不足から亡くなってしまう高齢者も続出しました。
介護に関する問題も明らかになり、プライベートなスペースが十分にとれない避難所でのおむつ交換などをせざるを得ない状況もありました。
これらの解決のため、2006年、内閣府・総務省消防庁・厚生労働省がとりまとめたのが「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」外部サイトです。
このガイドラインを契機に「災害弱者」といういい方から「災害時要援護者」と改められ、2013年の災害対策基本法の一部改正により「避難行動要支援者」とされました。
災害にあえば、健常者でも命の危険にさらされたり、助かったとしても相当過酷な避難生活をしいられますが、高齢者・障害者などは逃げ遅れる危険性が高くなるなど、命の危険にさらされる確率はさらに高まり、避難生活では健常者以上のストレスを背負うこととなります。
以上のことから、高齢者・障害者はもちろんですが、子ども・妊婦・外国人なども広い意味での「避難行動要支援者」として、適切な支援ができなければ、それは災害に対する弱さ(脆弱性)といえます。
今まで防災は地域により、発災した時間により、災害の種類により対策が考えられてきたが、ジェロントロジーという概念のもと考えてみると、災害に対する弱さ(脆弱性)は、人のライフサイクルによっても異なっていくものだと考えられます。
例えば妊産婦や乳幼児のいる家庭と高齢者一人暮らしの家庭では、日頃の備えから災害に持ち出す袋の中身まで変わってきます。
この、人のライフサイクルにあわせた防災の考え方を「防災ジェロントロジー」として、超高齢社会における新しい防災の考え方として広めていきたいと考えています。
防災ジェロントロジーの考えは、防災、多様性、超高齢社会といったこれからの地域社会にも重要です。
地域福祉と地域防災計画など自治体においても欠かせない観点でしょう。
超高齢社会と共生社会を見据えた防災をお伝えしている、防災介助士が防災ジェロントロジーと地域の防災計画の第一歩に役立ちます。
災害が起こる前に日頃から備えていきましょう。
文責:防災介助士インストラクター
冨樫正義
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