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南海トラフ地震と障害のある人への防災対策:防災介助士の視点で解説

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南海トラフ地震と障害のある人への防災対策:防災介助士の視点で解説

南海トラフ地震は、今後30年以内に70〜80%の確率で発生すると予測されています。この巨大地震に備えて、特に障害のある方々とその家族、そして企業は十分な準備が必要です。本記事では、防災介助士の視点から、障害のある人のための具体的な対策について解説します。

南海トラフ地震とは

南海トラフ地震とはフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域「南海トラフ」を震源地とした地震のことであり、日本では駿河湾から遠州灘(静岡〜三重)、熊野灘(和歌山〜三重)、紀伊半島の南側の海域と土佐湾を経て、日向灘(宮崎県沖)などがその区域に入ります。

日本付近のプレートの模式図
画像:気象庁 https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/nteq/nteq.html

海トラフ地震の過去の地震

南海トラフを震源とした地震は100-150年間隔で定期的に発生しており、過去には以下のような地震があります。

  • 684年 白鳳地震(マグニチュード8.2)
  • 887年 仁和地震(マグニチュード8〜8.5)
  • 1099年 康和地震(マグニチュード8.2)
  • 1361年 正平地震(マグニチュード8.4)
  • 1498年 明応地震(マグニチュード8.6)
  • 1707年 宝永地震(マグニチュード8.4〜8.9)
  • 1854年 安政地震(マグニチュード7.0〜7.1)
  • 1944/1946年 昭和地震(マグニチュード7.9/8.0)

参考: 「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(地震調査研究推進本部)

海トラフ地震で障害者や家族、支援者が準備すべきこと

南海トラフ地震に特化した対策と言うものではありません。地震などの災害時全般で以下のようなことを確認しましょう。

  • 1.個別避難計画の作成:自治体や支援者と協力して、個々の障害特性に応じた避難計画を立てましょう。
  • 2.避難場所の確認:バリアフリー対応の避難所や福祉避難所の場所を事前に確認し、家族で共有しておきましょう。
    住んでいるところに危険がないのであれば在宅避難、とどまることができないならば避難場所に一時的に避難、そして一定期間生活しなければならないときは避難所といった判断も必要な場合があります。
  • 3.支援ネットワークの構築:近隣住民や福祉サービス提供者との連携を強化し、緊急時の支援体制を整えましょう。
  • 4.定期的な防災訓練:家族や支援者と共に、実際の避難経路を使った訓練を行いましょう。

害者のための南海トラフ地震
対策チェックリスト

障害のある人は南海トラフ地震などの大災害に備えてどのようなことを準備すればいいでしょうか。ここでは障害のある人本人だけでなく、家族や支援者、職場にいる障害のある従業員や障害のあるお客様への準備としても考えておきたいポイントです。

なお、視覚に障害のある人が災害時に備えて普段持っているものについては下記の記事をご覧ください。

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日常生活での備え:必需品と非常食

  • 3日分以上の水と食料(障害特性に合わせた食品)
  • おくすり手帳や障害者手帳のコピー
  • 白杖などの補装具や日常生活用具の予備
  • 衛生用品(消毒液、マスク、手袋など)
  • 携帯用トイレ(障害特性に応じたもの)

医療ケアと投薬管理の準備

  • 1週間分以上の常備薬
  • 医療機器や電動車いすなどのバッテリーや予備電源
  • かかりつけ医療機関の連絡先リスト
  • 医療的ケアに必要な物品(カテーテル、経管栄養剤など)
  • 医療情報カード(アレルギー、持病、服薬情報など)

コミュニケーション手段の確保

  • 筆談用具やコミュニケーションボード
  • 補聴器の予備電池
  • 手話通訳者や要約筆記者の連絡先
  • コミュニケーション支援ボードの準備
  • スマートフォンや通信機器の予備バッテリー

企業における障害のある従業員やお客様への対応策

  • バリアフリー設備の点検と改善
  • 避難経路の段差や手すりなどの確認
  • 車いす使用者も利用可能な避難スペース・トイレの確保
  • 聴覚障害者向け視覚的情報伝達手段(筆談ノートなど)
  • 従業員教育:障害のある人の介助や支援の基礎知識
  • 簡単な手話や筆談によるコミュニケーション訓練
  • 障害者用の避難器具の使用方法の習得
  • 定期的な避難訓練への障害者の参加促進
  • 障害当事者が参加した災害対策計画の見直し
  • 多様なコミュニケーション手段を用いた情報発信
  • 避難経路への点字ブロックや案内板の設置

まとめ:障害者と共に備える南海トラフ地震対策

南海トラフ地震に備えるためには、障害のある方々とその家族、そして自治体や企業が連携して準備を進めることが重要です。個別避難計画の作成、必要な物資の備蓄、コミュニケーション手段の確保など、障害特性に応じた細やかな対策が求められます。 企業においても、バリアフリー環境の整備や従業員教育を通じて、障害のあるお客様への適切な支援体制を構築することが必要です。 防災は日々の積み重ねです。この記事を参考に、今日からできることから始めてみましょう。障害の有無に関わらず、全ての人が安全に避難できる社会を目指して、共に備えていきましょう。

“誰も置き去りにしない”インクルーシブ防災と防災介助士

防災介助士では、災害とは何か、を学び、高齢者や障害者など、災害時に配慮を必要とする、避難行動要支援者への応対について学ぶことができます。 防災においても忘れがちな多様な人への対応、バリアフリー対応についてしっかり備えておきましょう。

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