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サービス介助士25周年 サービス介助の日特別記念シンポジウム 開催レポート

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サービス介助士25周年 サービス介助の日特別記念シンポジウム 開催レポート

11月1日は「サービス介助の日」。そしてサービス介助士は開講25年を迎え、これを記念した特別シンポジウム「サービス産業の未来にヒトにしかできないサービスと共生社会の実現を考える〜サービス介助士が社会を変える〜」を開催しました。株式会社オリエンタルランド様、日本航空株式会社様、淑徳大学様からゲストをお呼びし、DX進展や無人化が進む現代において、対人サービスの価値や共生社会の実現について議論が行われました。
本記事はシンポジウムの様子をお伝えする開催レポートです。

講演①株式会社オリエンタルランド CS推進部CS推進グループ
バリアフリープロデューサー 野口 浩一様
「東京ディズニーリゾートのユニバーサルデザインへの取り組み」

野口様

(株)オリエンタルランド野口様の講演では、すべてのゲストが楽しめる環境作りを目指す取り組みが紹介されました。
東京ディズニーランド開業当時、「バリアフリー」という概念は現在ほど社会に浸透していませんでした。当初は手探りで対応しながら、テーマパークという特性上、テーマ性を保ちながらの施設改善が求められていました。
バリアフリー化のきっかけは、ゲストの安全対策でした。段差や縁石でつまずく、転倒するといったことがきっかけとなり、施設の改善が進められました。
当初、障害のあるゲストに対しては「待ち時間なし」の優先入場を実施していましたが、これは「“障害のある人は待てない、待たせてはいけない”という思い込みがあったため」と振り返られています。しかし、東京ディズニーシー開業を機に、社内外関係者や障害のある人達との意見交換を経て、この運用を廃止。「一緒に楽しむ」ためのサポートという考え方に転換し、これが現在のユニバーサルデザインの取り組みの出発点となりました。
具体的な取り組みとして、視覚障害のあるゲスト向けに、キャラクターの全体像を把握できる立体模型や、ガイド端末が提供されています。さらに、対話型アトラクションでは、キャラクターとゲストの会話をリアルタイムで通訳する手話通訳サービスを実施しています。 施設設計においては、障害のあるゲストもないゲストも共に使える環境作りを重視。商品棚は適切な高さに設定することで、車いす利用者も自分で好きな商品を選べるようになっています。またトイレに関しては、身体機能の違いに配慮し、左右両方からアプローチできる配置を採用しています。
パーク内でのサービス品質を高めるため、キャストのサービス介助士資格取得を積極的に推進されています。サービス介助士資格取得により、障害のあるゲストへの適切な接遇の基礎を習得し、一人の「人」として接する意識が高まりました。


講演②日本航空株式会社 客室本部
客室品質企画部人財品質グループ 北 彩乃様
「誰もが旅を楽しめる社会の実現に向けて、
心に寄り添う客室乗務員の取り組みについて」

北様

日本航空株式会社(以降JAL)北様の講演では、誰もが旅を楽しめる社会の実現に向けた取り組みが紹介されました。北様は入社以来、国内線・国際線での客室乗務員として勤務され、現在は客室品質企画部人財品質グループでアクセシビリティ対応力向上のための企画・運営を担当。「障がいのあるお客様が『迷惑をかけてごめんね』とおっしゃることがありますが、私たちはそのような思いを持っていただきたくありません」と北様は語られます。JALでは現在、独自のアクセシビリティ社内資格制度「JAL Accessibility Assistant」が導入されています。この制度は、移動にバリアを感じているお客様に対し、ストレスフリーなサービスを提供することを目指しています。資格は基本的な知識の習得から、より高度な対応力の習得まで段階的に構成されており、障がいのある方の視点を取り入れた教育内容となっています。国際的な航空会社として、海外の乗務員にもこの制度を展開しています。近年は海外基地乗務員向けの英語版実技講習を開始し、資格取得者が着実に増加しています。また、上級資格保持者は特別なバッジを着用して乗務を行っており、視覚的にもアクセシビリティへの取り組みを示しています。訓練では、機内専用の車椅子を使用した実践的な演習や、アイマスクを着用して視覚障がい者の立場を体験するなど、実際の機内環境に即した内容が含まれています。
北様は「知識と技術だけでなく、お客様との適切なコミュニケーションを取ることが重要で、不安な気持ちに寄り添うだけでなく、『楽しい』気持ちにも寄り添うことが大切」と強調されています。JALは中期経営計画においてESG戦略を重視しており、移動を通じた関係づくりと繋がりの創造を目指しています。多くのサービス介助士資格保持者がおり、サービス介助士と社内の資格制度を組み合わせることで、より充実したサービスの提供を目指されています。「飛行機での移動は、電車やバスと比べてハードルが高く感じられる方も多いかもしれません。しかし、私たち客室乗務員が持つ気配りの心と専門知識で、すべてのお客様に安心して空の旅を楽しんでいただける環境を作っていきたい」と自社での取り組みの意義をお話いただきました。


講演③淑徳大学 経営学部 観光経営学科
准教授 白井 昭彦様
「共生社会実現に向けてユニバーサルデザインと
心のバリアフリーを考える」

白井様

淑徳大学観光経営学科の白井様は、観光分野やサービス産業への就職を目指す学生たちに向けた多様性の理解を深めるための教育実践についてお話いただきました。
白井先生は、まず日本の人口構成について具体的な数字を示しながら解説され、現代の日本社会には、車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者、内部障害者、高齢者、在留外国人、通院者など、様々な属性を持つ人々が共存している実態が明らかにされました。また、多くの人々が日常的に公共交通機関を利用しており、電車、バス、タクシー、航空機といった交通手段が広く活用されていることも説明されました。
観光の観点からは、国内旅行者数や訪日外国人観光客数の具体的な数字が示され、多様な属性を持つ人々が観光活動に参加している現状について解説いただき、これらの数字は、観光産業において多様性への配慮が重要であることを示しています。
ユニバーサルデザインの認知度の推移について、近年の調査結果によると、認知度は着実に上昇していることを紹介いただきました。特に注目すべき点として、現在の学生たちは中学校・高校でユニバーサルデザインを学んでおり、ほとんどの学生が概念を理解しているという現状が紹介されました。一方、心のバリアフリーについては、同じく2021年の調査で、言葉と意味を理解している人が27.1%、言葉だけ知っていた人が22.1%で、合計49.2%という結果となっており、依然として課題が残っていることが示されました。
このような多様性や心のバリアフリーの実践において、白井様からは知識の定着率について興味深い解説がありました。従来の講義形式での学習は知識の定着率が低いのに対し、視聴覚教材の使用、実演の見学、グループディスカッション、体験学習、そして他人に教えることで段階的に高い知識の定着率が得られることが示されました。
これらの知見を活かし、白井先生の授業では、車いす介助体験、視覚障害体験、高齢者体験など、実践的な体験学習を積極的に取り入れています。さらに、地域のイベントで学生たちが一般の方々に体験指導を行う機会を設けることで、より高い学習効果を目指しています。 今後の社会で必要とされるサービスについて、基本的なサービスの提供だけでなく、個別対応、そして期待以上の驚きのあるサービスを提供することなど、段階的な向上の重要性が説明されました。特に、現代の観光産業において、富裕層を含む訪日外国人観光客の満足度を高めるためには、期待を超える驚きのあるサービスの提供が不可欠であることが強調されました。
このような背景から、多様性への理解を深め、効果的な学習方法を実践することの重要性が改めて確認されました。これらの知見は、今後の観光・サービス産業を担う人材育成において、極めて重要な示唆を与えるものと言えるでしょう。


第2部 パネルディスカッション

日本ケアフィット共育機構の冨樫をモデレーターに、株式会社オリエンタルランドの野口様、日本航空株式会社の徳永様、淑徳大学の白井様によるパネルディスカッションを行いました。テーマは「サービス介助士の学びと人間力」で、サービスの現場での実践的な教育や、それを通じた共生社会の実現について意見が交わされました。

第2部パネルディスカッション

第2部パネルディスカッション

野口様は、ディズニーリゾートでの接客体験を通じて、キャスト一人ひとりが判断力と人間力を発揮し、ゲストへの対応を自分自身の判断で行う重要性について語りました。キャストが自主的に行動し、ゲストに寄り添うことで、単なるサービス提供を超えた価値が生まれると述べ、さらに現場での信頼の構築がサービスの質の向上に繋がるとの見解を示しました。

徳永様は、客室乗務員や空港スタッフに対するアクセシビリティ教育の重要性を強調されました。お客様が安心して快適に移動できるよう、特に障がいのあるお客様への対応について全社的な教育を行い、スタッフが真の共感と理解を深めることが目指されています。さらに、社員教育がサービスの質を高め、JAL全体でのチーム力向上に寄与していると語りました。

白井様は、学生たちにバリアフリーや障害者支援の学びを通じて、現場での実践力を養う教育を行っている点に触れました。学生が学んだことを社会に出た後も実践することで、企業にとってもメリットがあるとし、社会全体での心のバリアフリー向上に繋がる可能性についても言及されました。

ディスカッションの最後には、共生社会を目指す上でのサービス介助士の役割について話し合われ、各企業や教育機関での取り組みが、社会全体での理解促進と実践に向けたベースを築いていく重要性が確認されました。


第3部 懇親会

パネルディスカッション終了後、会場では懇親会が和やかな雰囲気の中で開催されました。ケアフィットファームワイナリーが手掛けるナチュラルワインを提供させていただき、ご参加いただいた皆様に自然な醸造過程で生まれる芳醇な香りと深い味わいを楽しみいただき、季節の食材を活かしたオードブルは、地元の野菜をふんだんに使用した彩り豊かな一皿で、ワインとの相性も抜群でした。
懇親会では講演いただいた、野口様、北様、徳永様、白井様にもご参加いただき、活発な意見交換が行われました。和気あいあいとした歓談の中で、手話や補助犬についてのワークも交えた交流を実施し、サービス介助士導入企業の皆様同士の新たな連携の可能性も垣間見える、実りある懇親会となりました。

第3部 懇親会

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