掲載日:
全国のバス事業者様のインタビューを行う連載インタビュー。
今回は箱根・御殿場・湯河原温泉などの観光地や、小田原・南足柄などの市街地を結ぶ路線バスの運行、貸切バス輸送や、箱根湯本周辺の宿泊施設や観光スポットの巡回バス、手荷物輸送のキャリーサービスなど幅広い輸送サービスを提供されている箱根登山バス株式会社様(外部リンク)にお話を伺いました。
箱根登山バス株式会社
運輸部
課長代理 兼 研修センター副所長
田代 惠一様
運輸部
主査 兼 研修センター主任講師
川上 一男様
田代様
川上様
ちょうど今年の4月から事務所勤務になったのですが、それまでは30数年路線バスの運転士をしていました。大型二種免許を21歳の時に取りまして、そこからずっとですね。
田代様
川上主任講師が一番運転歴が長いと思います。私は20年ぐらいでした。
以前は車中に乗務員名刺があり、その横に資格取得者は「サービス介助士」と入れていました。それを見て出発前などに、お客さまから「サービス介助士って何ですか?」とお声かけいただくことがあり、勉強して資格を取得していることをお伝えしていました。そうするとお客さまから「だから手際がいいんですね!」と仰っていただけることがありました。最近では、正社員は全員取らせているので、持っていて当たり前になってしまい掲示しなくなったのですが……。
サービス介助士の実技教習を行う前は、「高齢な方や障害のある方は可哀想」という気持ちがありましたが、研修後は乗務員全員、接し方が変わったと思います。例えば「点字ブロックがあるところにドアを合わせて停めよう」という意識をしたり、バリアに気付くようになりましたね。バスを寄せようかな、ニーリング(車高調整装置)で下げようかな、お声かけしようかな、平なところに合わせようかな、などと考えて行動するようになりました。
田代様
私が運転士をやっていた時の常連のお客さまで、言葉を話すことが難しい様子のお子さんがいらっしゃいました。ずっと気にかけて接してきたのですが、私が運転士を辞めてその子がもう大人になってからも、デパートなどで会うと一生懸命に「運転士さん!」と向こうから声をかけてくれるんです。それがとても嬉しいですね。あの時に邪見にしていたらそんなふうには接してくれなかったと思います。
マスクをしていると表情は分かりませんが、笑顔は雰囲気が伝わるので、鉄道・バス・観光船・ロープウェイなど、グループ全体で取り組んでいます。
弊社に王子と呼ばれている運転士がおりまして、TVでも紹介されました。地元の方は「今日王子のバスに乗っちゃった」と喜んでくださったりしています。
一人乗務をするようになると誰も手伝ってくれる人はおらず、自分でやらなくてはいけません。そのため、弊社では一人乗務前に車いす乗降・非常扉の使い方・バスジャックが起こった際などの緊急時対応などの試験を実施しています。いくら運転が上手くても、これらができていないと一人乗務はさせていません。
車いす乗降では、時間を計って試験を行います。お客さまからいただくご意見の中には、「車いすの乗降に時間がかかる」というものがよくあります。乗降に時間がかかると車いすご利用のお客さまご自身も気まずい思いをされてしまいますし、他のお客さまも到着が遅れてしまいますので、試験時には「何分以内にできるように」という時間設定を設けています。
安全第一を考え、運転士にわかりやすいようにマニュアルを作成しています。
車いすの形状や機能がメーカーごとに異なるので、固定ベルトなどを着ける位置に四苦八苦しています。
鉄道であれば駅のホームは広いので、スロープだけ出して駅員さんがやれば問題ないのですが、バスの場合、大きい電動車いすだと通常の方法で固定ができないことがあります。
箱根は山道で広い道だけではないので、バスのスロープを出すだけでスペースがなくなり、乗り降りできなくなってしまう場所がほとんどです。
スロープを出せても傾斜で斜めになってしまったり、ガードレールとの隙間がこぶし一つ分しかなかったりということもあります。
車いすご利用のお客さまが乗車される際は、「どちらまで行かれますか」とお聞きしているのですが、そのバス停で「下りられるスペースがあるか」ない場合は「バス停前後の場所で降りていただくか」など考えています。
ただ、バス停以外の場所で乗降すると法律に触れてしまうので、無線で事務所に連絡して許可を取ることが必要です。
バス自体は全車両車いすに対応しているのですが、箱根の狭さが一番苦労するところですね。一番は行政が安全に乗り降りできるスペースを作ってくれるとありがたいのですが……。
定期的にあるのですが、費用も掛かりますし実現はなかなか難しいですね。
労働組合に参加していた際、障害当事者団体の方と公共交通機関の利便性をはかる意見交換会を行っていました。
少しでもスムーズな乗り降りができるように、車いすの固定用のフックをかけるところに黄色いテープを貼ったりすれば分かりやすいのではないか、などですね。
どこにかければいいのかと探すだけで時間がかかってしまうので、お互い気持ちよく乗り降りできるようにといろいろなことをやっていたのですが、実際はなかなか難しいです。
車いす製造時に、フックをかける場所に色を付けるなど、共通の規格のようなものがあれば、メーカーごとでバラバラになることもないですよね。それができるのであれば、自動車メーカー側もバス製造の際決まった固定金具が作れて、スムーズな乗り降りができると思います。
バス会社や車いすメーカー・自動車メーカーなど関係各所が一体となれる会議をする場などがあれば喜んで参加させていただきたいです。
公共交通で、「時間通りに来る」「最もサービスが良い」というものに加え、「どのようなお客さまにも対応できる」というものもあれば世界で日本が一番になれますよね。それが我々の理想です。
小田急箱根グループでは、「わかりやすい箱根 まわりやすい箱根」を目指して取り組んでいます。
先日二人で箱根に行ったのですが(5月末に取材)、結構バスも満員でした。これから外国人観光客も戻ってきてくださったらもっと人が増えると思います。
障害のある方やお年寄りの方も箱根に気軽に来ていただけるよう、サービス介助士をどんどん取得していって、実際の業務で活かしていきたいと思います。
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日本の高齢者人口3,625万人! - 超高齢社会と認知症の推移(2024年版) -
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南海トラフ地震は、今後30年以内に70〜80%の確率で発生すると予測されています。この巨大地震に備えて、特に障害のある方々とその家族、そして企業は十分な準備が必要です。本記事では、防災介助士の視点から、障害のある人のための具体的な対策について解説します。
二人とも以前はバスの運転士でした。乗務をしながら運転士の指導も行っていたのですが、私は十数年前に現場を離れ、今は事務所で勤務しています。
その後事故担当係を経て、最近では研修センターを立ち上げ、安全運転訓練車を使用し初任運転士からベテラン運転士の教育指導を行い事故の原因究明など教育全般を行っています。事故を起こさないためにはどういったことが必要なのか、個別に教育をしています。