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誰もが暮らしやすいまちづくりを目指して、“かわさきパラムーブメント”を筆頭に先進的な取組を行う川崎市。
今回は福田紀彦市長に“バリアフルレストランin川崎アゼリア”を終えて、川崎市の取組について日本ケアフィット共育機構 理事高木が取材させていただきました。
高木様々な取組をされている“かわさきパラムーブメント”ですが、そうしようと思われる背景にはどのような想いがあるのでしょうか?
福田市長川崎市はまだ人口が増え続けていて、平均年齢も大都市圏の中でも若い都市です。
しかし、高齢化率は日本全体で見ると緩やかに上昇していますが、川崎市の場合は急激に上昇します。
そうなると何らかのケアが必要な人が爆発的に増えることが考えられるので、障害のある人もない人も、ケアが必要な人もそうでない人も含めて、
全員で支え合える地域になる必要があります。
今後10年で地域包括ケアシステムということが重要になると発信しています。
その取組の先にあるのは共生社会のモデルであり、そのような取組がないと地域としての持続可能性がない、市民から選ばれない地域になってしまうと考えています。
今は良くてもこのまちに住んでいたら今後が心配、と思われてしまうということは、都市経営という観点からも危機感があります。
高木現在多くの企業でも働き方が変わって、組織の成長だけでなく、働く人のワークバランスを尊重していかないと成り立たなくなっていくという考えになってきていますが、みんなで助け合うようにならないと地域として存続できなくなるというお考えと共通するものがありますね。
福田市長新型コロナウイルス感染症拡大による影響を、障害者雇用という視点にたつと、テレワークなどが進み、ある意味多くの人が働ける可能性が広がったのではないかと思います。
これまで不登校ということが問題とされていましたが、緊急事態宣言によって、みんな学校に通えなくなる状況になりました。
バリアフルレストランのような、当たり前という価値観を変えることが現実に起こり、これまで問題とされていたものを見直す機会になりました。
高木新型コロナウイルス感染症拡大によって、ある意味で今までの価値観を見直すチャンスになっているのかもしれませんね。
高木川崎市とはバリアフルレストランをこれまで2回実施させていただいて、今回は400名ご参加されました。
実施に向けて川崎市の担当者様とのお話する中で、多くの市民の皆様に参加いただきたい、という想いを伺いました。
福田市長のそのような想いもあって今回の企画実施があったのだと感じました。
福田市長2016年から、“かわさきパラムーブメント”を推進していますが、6年経過して、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会もあり、共生社会への意識が高まっています。さらに、共生社会が大事なことであるということを理解し始めている人が増えたように感じます。
しかし、いくら意識を変えようと言っても頭の中だけでは意識を変えることは難しく、体感すること、行動することから始まると思っています。
バリアフルレストランを体験させてもらって、体で感じることの大切さを知ることができました。
だからこそ、実施するにあたっては、少しでも多くの市民の皆様に参加いただけるような企画にすることを意識しました。
障害特性を頭の中で理解することは大事ですが、交流や体感から理解しないと身に入っていかないと思っていたのでバリアフルレストランは良い取組ですね。
高木先日川崎市内のボランティアの方とお話をしていたのですが、福田市長はいつもニコニコ笑っていて感じよく話しやすいとおっしゃっていました。
ブラインドサッカーの大会を富士通スタジアムで実施されたときも笑顔でスタッフの皆さんに話しかけられていて、現場と接すること、体験することをとても大事にされていると伺いました。
福田市長現場主義・対話を大切にしています。
新型コロナウイルス感染症拡大でこの2年間、いろんな交流で学ばせていただいた機会がとても減ってしまいましたが、「これからはできるやり方でもっと外に出ていこう」と年頭挨拶でも職員に伝えました。
私たちは自治体といっても、市民に一番近い仕事をしているので、今の世の中がどのような困りごとや困難があるのかということは、自分で見て、話してみないとなかなか発見できないことが多くあります。
基礎自治体だからこそ、とにかく外に出よう!対話をしよう!ということが大事であるという想いのもと市政を行っています。
高木社会は多数派と少数派に分かれ、多くのものが多数派に合わせて作られている、と伝えても、それはそうだけれど、難しいと感じる方もいます。
福田市長体験の中で「二足歩行の方ですね」と言われたときは面白かったですね。
全く違う立場に立つとこう見えるのだな、ということが分かりました。
世の中は障害について理解を深めていこう、という動きもありますが、視点を転換して考えてみよう、とする企画は意外とありません。
バリアフルレストランは徐々に理解を深めましょう、というのではなく、今と真逆の立場から見てみると、こう見えるのだ、ということを伝えており、全く逆の立場に立たせることによるインパクトはなかなかできない体験です。
視点が転換されていくことで、今までの考えが崩れていきました。
高木今の社会が偏っているということに気づいてもらって、いろんな人と一緒に考えていこう、という流れにしていきたいです。
参加者の皆様からのアンケートも好評で、私たちももっと多くの人に広めていきたいと思うようになりました。
高木かわさきパラムーブメントを6年続けてきて見えてきたもの、次の課題は何でしょうか?
福田市長名称をつけるときに“ムーブメント”という言葉を意識しました。
行政だけではなく、あらゆる人を巻き込んでいかないとムーブメントにはなりません。
そうやって言葉にすることを意識しましたが、6年経過しても、まだ入口でよちよち歩きだした感じだと思っています。
そのため、かわさきパラムーブメントの勝負はこれからです。
本当の意味でのムーブメントにしていき、“パラムーブメントなんていらないよね”という世界にしていかないと、真の共生社会にはならないと感じています。
ムーブメントが必要にならないというところに向かうためには、まだ始まったばかりです。
しかしムーブメントをやる意味というのは非常に大きく、関わるメンバーも革新的な方たちばかりで、行政サイドからすると難しいと思うものもあっても、そういった部分にポジティブにチャレンジしていくことで、自分自身も勉強になりました。
それが次第に共感いただいた人たちを増やすことにつながりました。
私たちがどこまでついていけるかやってみたら面白いことができるのではないか、というのが最初からの考え方でしたね。
かわさきパラムーブメントのステートメント
高木トップの方がそのようなお考えをお持ちであるかどうかが、変わるポイントですね。
バリアフルレストランを一緒に進めていった担当者様ともお話の中で、市民の皆様だけではなく、まずは自分たちから、トップから変えていくことで周囲の人たちに伝えていこうという熱い思いを語られていました。
私たちからすると、その“トップを変える”ということが難しいのでは、と思っていたのですが、福田市長がそのようなお考えがあったからこそだったんですね。
高木このような状況で今後の取組はどのようなことをお考えでしょうか?
福田市長これまでかわさきパラムーブメントはオリンピック・パラリンピック推進室で進めていましたが、今年度からかわさきパラムーブメントを進める部署を新たに設置し、部会を作り進めていきますので、むしろこれまでよりパワーアップします。
教育や雇用、バリアフリーなどの部会で既に活発に意見交換が行われており、有識者のアドバイスを取り入れながら部署を横断した体制でこれからかわさきパラムーブメントをより一層進めていきたいと思います。
また、2024年に市制100年を迎えます。
川崎市のブランドメッセージが「Colors,Future! いろいろって、未来。」であり、多様性を大事にしてきたまちなので、もう一度その価値を高めあっていこうという機運にしていきたいと考えています。
市内には競技クラブチームやかわさきパラムーブメント実施店の方など様々なステークホルダーがいるので、楽しみながらやっていき、それが色々な人に伝播することで、自然と共生社会に近づいていくと思います。
川崎市ブランドメッセージ
高木自治体の担当者さまとお話していると、個人的には色々とやりたいのにうまくできていない、とお悩みの方もいるので、是非川崎市の取組が刺激となって伝わっていくと良いですね。
本日はありがとうございました。
川崎市 福田紀彦市長プロフィール
1972年生まれ。川崎市立長沢小学校、川崎市立長沢中学校卒業後、渡米。
米国アトランタマッキントッシュハイスクール卒業。米国ファーマン大学政治学専攻卒業。
神奈川県議会議員、神奈川県知事秘書、早稲田大学マニフェスト研究所研究員などを経て、2013年川崎市長に就任する。2021年10月に再選を果たし、3期目。宮前区在住。
かわさきパラムーブメント外部リンク
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