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高齢化により企業の顧客も高齢者が増えるため、高齢者に適したサービスや接客をすることが重要になっています。
一方で、対応中に高齢なお客さまが突然怒り出す、何度も同じ説明を求められる、など対応に困るケースも増えてきます。
高齢なお客さまが特に多い金融機関では、お客さま自身でお金を引き出したにも関わらず、“預金を盗まれた”という、ご自身の思い込みともとれるような問合せが来ることがあります。
ここではこのような高齢者の思い込みに対応するためのポイントをお伝えします。
こちらが事実や根拠を持って伝えても理解してくれない、というような高齢者が事実と異なる認識・思い込みを持つ原因はいくつかの要因が考えられます。
その高齢者が年齢を重ねて得てきた経験則から物事を判断しているために、「~であるに違いない」という考えを変えることが難しくなっている可能性もあります。
サービス介助士や認知症介助士でもお伝えしていますが、人間の知能には“結晶性知能”と“流動性知能”の2種類があります。
結晶性知能とは、経験や学習から得たストックとも言える知能のことです。
言語の獲得や、周囲と適切に関係性を築くためのコミュニケーション能力、あるパターンから答えを導き出す洞察力などが結晶性知能にあたります。
長年の経験で体に染み込んだ職能や技術、身近な例で言うと縫製や編み物は高齢になってもその技術は衰えずに発揮できることが多いです。
流動性知能とは、新しい情報を得て、それを処理したり、適応したりするための知能です。
例えば瞬時の計算や図形の処理などは流動性知能が影響しています。
知能は加齢により変化していきますが、結晶性知能は経験が重なることで増えていき、高齢になっても比較的安定して維持されるのに対して、流動性知能は20代前半でピークを迎え、その後低下していくと言われています。
高齢者は流動性知能が低下しても、それまで得てきた結晶性知能がそれを補い社会生活を送っています。
しかし、イレギュラーなパターンに遭遇する際に、それまでの経験から判断しようとするために、思い込みにとらわれてしまっている可能性があります。
単純な事実誤認の思い込みではなく、そもそも事実とかけ離れた思い込みをする原因は認知症の妄想障害によるものも考えられます。
認知症の妄想障害にはいくつか種類があります。
物盗られ妄想は認知症で最も多い妄想障害の一つです。
その人の所有物に関連することが多いので、お客さまの現金や通帳を扱う金融機関では特に多い事例かもしれません。
認知症の記憶障害により、所有していたものを失くしたこと・どこかに置き忘れたこと自体を忘れ、記憶障害を取り繕うために
“盗まれた”という判断になることが多いと言われています。
預金を盗まれた、と金融機関で訴える高齢なお客さまは、自分自身が預金を引き出した記憶がないために、そのように思い込んでいる可能性もあります。
孤独感や不安、認知症による喪失感などの感情が昂じて、様々な被害妄想になることがあります。
例えば対応中に1人だけにされる状況になった際に、“自分は邪魔な存在だ”と思い込んでしまったり、その人が聞こえない場所で従業員同士がコミュニケーションを取っている姿を見て、“悪口を言われている”と思い込んでしまったりします。
従業員から暴言を受けたという被害妄想があると、対応に関わっていない第三者が本人からその話を聞いた際に、本当にそのような対応をされたと思われる可能性もあります。
認知症のBPSD(行動・心理症状)のひとつでもある幻覚には、幻視、幻聴、幻臭、幻触、幻味の5つの分類があり、その中でも幻視が認知症の人によく現れる症状です。
幻覚には、例えば応対室にあるハンガーが人に見えたり、小さなゴミが虫に見えたりします。
レビー小体型認知症の場合、幻視によって突然おびえたり、恐怖から大声を出したりすることがあります。
高齢者の思い込みや、認知症による妄想障害と思われる思い込みに対して、事業者で対応する際のポイントをお伝えします。
ここでは大まかなポイントになるため、自社の課題により踏み込んだ対応を進める場合は、初回無料の高齢者対応相談室までお問合せください。
たとえ事実と異なることであっても、その人にとっては真実になっており、それを否定されることでネガティブな感情が悪化し、さらに事態を悪くするリスクがあります。
まずは相手が言うことや感じていることを、否定も肯定もせずに受け止めることで、その人が安心できる状況を作りましょう。
気持ちが落ち着くことで思い込みによる感情のこじれがほぐれ、対応がスムーズに終わることもあります。
加齢による感覚機能の低下のために、こちらからの情報が適切に伝わっていない可能性があります。
高齢者の思い込みを適切な認識をもってもらえるように、対面の応対以外でも工夫をすることでスムーズな対応につながります。
視覚情報であれば、文字のフォントや色、大きさはコントラストがはっきりしたものにします。
文字による案内も可能な限り図解や、手順が分かるフローチャートなどにして、今何をすべきなのかが分かる様な情報を伝えるように意識しましょう。
音声情報に関しては、高齢になると高音が聞き取りにくくなります。
案内に使用する通知音の配慮や、口頭で説明する際は、早口にならないよう、低めの声にして伝えることを意識しましょう。
幻視によって、ある物が全く別のものや人に見える、という場合、実際にその物を手に取ってもらったりすることで改善する場合があります。
情報伝達の感覚面における配慮だけでなく、手順や手続きの配慮も高齢者のスムーズな対応につながります。
窓口が複数に分かれることや、手順が複雑で直感的に分かるものではないと、その都度質問や問合せが必要になり、高齢者に混乱を招いてしまいます。
最終的にお客さまに提供すべき価値が何なのか、ということを念頭に、価値提供のためにどのような手順があればいいのか、改めて考えてみるといいかもしれません。
一般的に、人は短期的に記憶できる情報は7個程度と言われています。
高齢になれば短期記憶は低下するので、記憶に頼る手順や手続きは見直すべきでしょう。
また、手順や手続きを文字だけでなく、記号やフローなど非言語的コミュニケーションを交えて、記憶に頼らずに、すぐに分かる様な工夫があると効果的です。
高齢者や認知症と思われる人の応対の基本は、否定しないことですが、コミュニケーションのとり方によっては、本来の用件と異なる話題が続いて応対を終了できないことや、気持ちがなかなか落ち着かない場合もあります。
また、否定しないこと・共感することに意識が行き過ぎで、応対した従業員が“共感疲れ/共感疲労”を起こしてしまうリスクがあります。
制服を着た従業員複数名で対応すると圧迫感が出てしまうため、メインとなる応対者を立てながらも、内容を複数人で共有することや、店舗・組織としての判断をスムーズに出せるようなフォロー体制を整えます。
近年、コロナによってオンライン化・無人化がより一層進み、高齢者にとって利用しづらいサービスになる可能性もあります。
一方で限られた人員で効率的に対応が求められる状況においては、高齢者とのコミュニケーション上の配慮だけではなく、制度や情報手段の見直しなども含めたサービス設計が重要です。
高齢者が増加することで、今後より一層高齢者に適切なサービス提供が求められる企業にとって、どのような取組を進めればいいのか分からない時は、高齢者対応相談室にご相談ください。
本窓口は高齢なお客さま対応を支援するための相談窓口です。
お客さまとの紛争解決を仲介するものではございません。
既にお取引きいただいている法人様は弊機構担当者までご連絡ください。
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