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高齢者人口の割合が28.4%(2020年9月)にもなった超高齢社会の日本において、農業の担い手についても課題があります。
一方で、障害者雇用率の引き上げなど国の施策により障害者の活躍が進められていますが、企業の受け入れ体制や定着率にもまだまだ課題が残っています。
そのような社会で、現在ケアフィットファーム別のウィンドウで開くでも取り組んでいる、農業と福祉の分野をまたがる連携“農福連携”が注目を集めています。
リベルケアフィットでは、今後シリーズ記事として農福連携について紹介していきます!
第1回目となる本記事では、そもそも“農福連携”とはどういったものなのかについて紹介していきます。
農福連携は障害者や高齢者などが農業分野で活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みです。
近年、農福連携の取り組みは、障害者等の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や、高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながるなど、相乗効果が期待されています。
以前から、福祉施設などが農業を手伝う取り組みはありましたが、「農福連携」という言葉が登場したのは2000年代に入ってからのことです。
特に2016年に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」には障害者や高齢者が最大限活躍できる環境整備の一環として「農福連携」が盛り込まれてから全国的にも広がりを見せています。
また、2019年に打ち出された「農福連携等推進ビジョン」では、より世間に広げていく具体策が打ち出されています。
(表は横スクロールしてご覧いただけます。)
年 | 法令または方針 | 内容 | 農福連携への影響 |
---|---|---|---|
2013年 2018年 (2021年) | 障害者雇用促進法改正 | 企業の障害者の法定雇用率が段階的に上がる。 (一般企業:2.0→2.2→(2.3%)) | 企業の雇用も義務付けられてきた。 |
2016年 | ニッポン一億総活躍プラン | 障害者や高齢者が最大限活躍できる環境整備の一環として「農福連携」が盛り込まれた。 | 政府の方針として盛り込まれる。この後、推進する団体も発足。 |
2018年 | 経済財政運営と改革の基本方針 | 農福連携の重要性があげられる。 | 経済改革の一環として推進されることとなる |
2019年 | 農福連携等推進ビジョン | 「知られていない」「踏み出しにくい」「広がっていかない」の3つの課題に対する取り組みがあげられる | 普及拡大に向けての取り組みをスタート |
農福連携の声が高まってきた背景には、農業・福祉、双方が抱える諸問題と、それを解決しようとするニーズの関係があります。
農業における一番の課題は、農業従事者の大幅な減少です。
1997年からのおよそ10年で414万人から182万人へと半分以下に減少しています。
同時に従事者の高齢化は進み、担い手不足はもちろん、農業全体の衰退へとつながっています。
結果、農産物関連の産業を中心としていた地方経済は衰退し、それが更なる農業人口の減少を加速する悪循環へとつながっていきます。
農業従事者の減少
1997年:414万人⇒2018年182万人
農業従事者の高齢化
1997年から2017年の間に平均年齢は7歳上昇
耕作放棄地の増加
年間で高知県ほどの面積が耕作放棄地となっている
福祉分野の抱える問題の一つに、障害者の就労の問題があげられます。
障害のある人たちが、自立し、生活していくためには、就労して収入を得ていくと同時に、社会生活に参加し、交流していく必要があります。
近年、障害者人口は増加の傾向にあり、特に精神障害者の増加は時代を反映しているとも言えます。
その反面、障害者の雇用は、国の諸制度により推進はしてるものの、企業の受け入れ体制の問題や、定着率が低いなど多くの問題をはらんでいます。
そこで注目度が上がってきているのが農業分野と福祉分野の連携です。
障害者の増加
就労・社会参加の場の不足
自立のための工賃確保
農作業の手伝いによって、一定時期に集中する作業の負担を軽減でき、農産物の加工、出荷準備の作業などに加わることで、販路の拡大や出荷販売量の増加ができます。
結果、作業効率が向上し、収穫量のアップにつながり、今後の規模の拡大も期待されます。
農業には、種まき、耕うん、収穫など、多種多様な作業があります。
障害のある人たちにとって、作業能力に合った作業計画を立てることができます。
また、土に触れる事での精神的な安定への効果も大きなメリットです。
その中で就労するための技術習得や生活サイクルの訓練ができて、賃金ももらえます。
なにより、地域に貢献することによるやりがいや地域の人との交流は、いわゆる健常者の中で孤立しがちな障害のある人にとって、将来の人生を歩む大きな原動力となることでしょう。
農福連携は、農業・福祉分野だけでなく、地域の様々な問題を解決する手段として期待されています。
全国的な広がりはまだまだですが農福連携にも、デメリットというより、課題はもちろんあります。
農業を営む人の多くは、作業を家族で行っていることが多いです。繁忙期には近所の人の手を借りたり、農業協同組合などからアルバイトを紹介してもらうなどありますが、農福連携のような取り組みを調べること自体に時間をかけることも出来ない、と感じる方もいるでしょう。
農業で生計を立てているのであれば、それなりに大きな規模の生産を行っています。
その労働は日が昇ってから日が沈むまで、毎日行わなければ間に合わないほどです。
福祉施設が人員を派遣できる時間は限られており、それを手伝うにあたって、日中の数時間では終えることができないという見方もあります。
ケアフィットファームをはじめとする福祉施設では、施設外修了にあたっては、依頼された作業の経験を持つ人の人選、複数人の利用者に支援員を付けたユニットで派遣することで期待されるスピードに応じられるように考慮します。
依頼された作業を、以前に経験している人、またはその作業が可能な能力を持つ人を中心にユニットを組み、また指導をするにあたって、それぞれの障害のあるメンバーが持つ特性を把握した支援員が付いて、作業の指導・管理を行います。
大量の作業に対応するスピードや質が求められる中では、普段障害のある人と接する機会が少ない人だと、障害のある人への偏見も相なって、様々な懸念を持つこともあり、「障害者だから効率が悪くても仕方がない」という見られ方をされることもあります。
しかし障害があっても、高い能力を持っている人たちもいますし、そうでなくとも得意な部分を活かし、苦手を補い合うことで、障害のない人とそん色なく働くもできます。
だからこそ、ケアフィットファームでは施設外就労での派遣にあたっては、派遣するメンバーの人選、付き添う支援員の指導の在り方には特に厳しい指導が入ります。
このような農福連携への課題解消や相談に対して、農業と福祉のマッチングを行う行政サービスもあります。
例えばケアフィットファームのある山梨県では「農福連携推進センター」外部リンクというものがあります。
農業従事者と福祉施設の間にたって、必要とされる作業から、それができるであろう施設を探し、派遣できる人数や期間、その事業所の利用者の能力や経験を照らし合わせてマッチングを行います。
これによって、作業におけるスピード、質、量の条件を充たせるような調整を行ってくれています。
今回は農福連携そのものについて紹介していきました。
農福連携は少子高齢化が進む日本において地域やコミュニティが抱える様々な課題の解決にも繋がることが期待できます。
ケアフィットファームでは山梨県甲州市で障害のある仲間たちと一緒に様々な農作物の生産や、収穫物を加工・販売などを通じた農福連携に取り組んでいます。
ケアフィットファーム別のウィンドウで開くの取り組みについては今後詳しくご紹介しますが、活動に興味のある人はお気軽にご連絡ください。
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