オンライントークセミナー開催レポート

7月15日(木)これからの共生社会を考えるオンライントークセミナー
「コロナ時代の多様な人への合理的配慮のあり方」開催レポート

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7月15日(木)これからの共生社会を考えるオンライントークセミナー「コロナ時代の多様な人への合理的配慮のあり方」開催レポート

コロナ禍によって発生した新しい生活様式。
多くの人がこの新生活に慣れ始めていますが、その変化に取り残され、困っている人も現実には存在しています。
本講演では、コロナ時代の多様な人への合理的配慮のあり方をテーマに、社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会の会長である、阿部一彦様をお招きしご講演いただきました。ご自身も左下肢に障害がある阿部氏。ご自身の体験も踏まえながら障害当事者の困りごと、そしてこれからの共生社会について幅広くお話しいただいているので、是非ご覧ください

イベントレポート

障害者の定義と社会的障壁

阿部氏のお話しは障害者基本法という法律についてから始まりました。

障害者は「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と規定

障害者基本法(2011年改正)

この法律は、心身の障害だけでなく、「社会的障壁」により生活に制限を受けている人を障害者と定義しました。

社会的障壁とは以下の4つに大別される、社会がつくり出したバリアのことです。

  • 事物(通行、利用しにくい施設、設備など)
  • 制度(利用しにくい制度など)
  • 慣行(障害者の存在を意識していない慣習、情報提供など)
  • 観念(障害のある人への偏見、心の壁など)

このようなことが障害者の日常生活、社会生活を妨げているが、だからこそ社会的障壁を除去することが大切だと阿部氏は述べます。

そして国連の障害者権利委員会の資料を用い、社会的障壁を除去するために必要な事について以下のように述べます。

「まず大事なのは、アクセシビリティを提供するための環境の整備です。ユニバーサルデザインや支援技術を通じて、障害のあるなしに関わらず使いやすい環境を提供する義務があります。しかしながらそうしたアクセシビリティの漸進的な実現には時間がかかるため、個人に当面の利用機会を提供する一つの手段として、合理的配慮が使用されることがあります。」

車いす使用者・肢体不自由者の特性とコロナ禍での困りごととその対策

では実際に、障害者、今回では特に車いす使用者と肢体不自由者にはどのような困りごとがあるのでしょうか。 日本ケアフィット共育機構が公開している「サービス介助士における新型コロナウィルス感染症予防対策ガイドライン―感染しない・させない介助・接遇・施策―」を用いて説明いただきました。

サービス介助士における新型コロナウィルス感染症予防対策ガイドライン―感染しない・させない介助・接遇・施策(別のウィンドウで開く)

ガイドラインの内容に加えて、阿部氏自身の具体的な困りごとについても紹介していただきました。

「左下肢に障害のある私は左の膝関節を固定できません。ですので、補装具というものを付けています。これを付けていると関節を曲げることができません。そんな私の苦手なことはセルフサービスの飲食店です。バランスがうまく取れないので水や汁物がこぼれてしまいます。また、洋式トイレの無いところにはいくことができません。そして、大きな段差や階段があると昇り降りできません。例えば、高速バスの入口の段差って高いですよね。両方に手すりがあると掴まって腕の力で乗ることができるのですが、例えば右側にしかない場合は乗ることができません。ですので、私は前もって連絡をして、乗車時間と場所を伝えるようにしています。そうすると両方に手すりがついているバスを手配していただけるようになりました。このような配慮が重要であること、それと同時に私たち(障害当事者)もしっかりお話しすることが大事だと思っています。」

高齢者の特性とコロナ禍での困りごととその対策

阿部氏は高齢な方についても言及します。人間は加齢により身体の様々な部分に機能低下が起こります。それにより、できないこと、大変に感じることが多くなり、生活をするうえで困りごとが増えます。

具体的な特性や困りごとに関しては、先ほどと同様に、日本ケアフィット共育機構のガイドラインを用いて説明いただきましたので、詳しく知りたい方は以下のリンクから無料でガイドラインのお申込みができますので、ご参照ください。

サービス介助士における新型コロナウィルス感染症予防対策ガイドライン―感染しない・させない介助・接遇・施策(別のウィンドウで開く)

障害理解と障害者理解

上記のような困りごとの理解促進について、阿部氏は次のように語ります。

「私たちが障害によってどのようなことが不便なのか、困っているかを理解していただくだけでなく、それに対してどのような配慮が必要なのかも理解していただくよう努めることが大切です。困りごとに対して過重な負担にならない限り、必要な配慮が当たり前に行われる、つまり合理的配慮が社会全体で理解される。そして、必要な配慮を、私たちから伝えることが重要です。」

日本における社会変革の大きな機会

今、日本には大きく社会が変わる機会が訪れていると阿部氏は述べます。一つは、2014年に締結された国連障害者権利条約での「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という言葉から、当事者の参画が様々なところで見られるようになりました。
そしてもう一つはオリンピック・パラリンピックです。

「残念ながら無観客腕の開催になりましたが、様々な人が観戦、参加するためユニバーサルデザイン2020行動計画をもとにしたユニバーサルデザインの街づくりと心のバリアフリーの浸透が図られました。合理的配慮、お手伝いの意識の向上や企業の参画なども加えた総合的な環境整備が、誰もが暮らしやすい共生社会につながるレガシーになると確信しています。」

ここまで、障害当事者の困りごとと対策の話から始まり、最後はこれからの共生社会づくりというテーマで締めくくった阿部氏の講演内容をまとめました。共に生きる社会を作るために、多様な人が社会づくりに参加することが重要だと改めて考えさせられました。

最後に次回のイベント情報を記載しますのでご都合が合う方は是非ご参加ください!

次回開催情報

【10/20(水)】これからの共生社会を考えるオンライントークセミナー「バリアフルレストラン 反転社会から“当たり前”を見直す」

開催日時2021年10月20日(水) 13:00-14:00
開催形式完全オンライン(ZOOMウェビナー利用)
手話通訳者を配置。UDトークによる字幕表示(予定)
参加費無料
ご登壇者様 川崎市市民文化局オリンピック・パラリンピック推進室 様
モデレーター公益財団法人日本ケアフィット共育機構 理事 髙木 友子
プログラム
  • 川崎市様 ご講演 25分
    ・パラリンピック・共生社会関連のお取り組み
  • バリアCAFE・バリアフルレストラン@二子玉川の事例紹介(川崎市様&ケアフィット)
  • 今後のバリアフルレストランの展開について(ケアフィット)

お申込みはこちら

公益財団法人日本ケアフィット共育機構

高齢者や障害者とのコミュニケーションや接遇(介助)、サービス提供のあり方を学ぶ資格「サービス介助士別のウィンドウで開く」は2000年から始まり、1000社以上の企業がバリアフリー施策、サービス向上、ダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組みとして導入しています。
企業として取り組むべき障害者差別解消法の理解や合理的配慮の浸透支援など、共生社会の実現に向けた様々な取り組みを展開しています。

公益財団法人日本ケアフィット共育機構


リベル・ケアフィット 〜「気づき」が集う場所〜

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