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防災介助士インストラクターの冨樫正義です。東日本大震災から10年が経過しました。東日本大震災では障害のある人の死亡率が被災住民全体の死亡率の約2倍に上ったとのデータもあります。その時何が起こっていたのか、障害のある人を取り巻く環境について、この10年で変わったこと、変わっていないことを3回にわたり、当事者のお話しからひも解いてきました。
最終回は聴覚障害者でサービス介助士アドバイザーの植松隼人さん、西佳子さん、村越啓子さんにお話しを伺います。
ーー東日本大震災が起こった時の状況を教えてください。
植松さんその日はサッカースクールで指導中でした。
大きな揺れがあり、すぐに大きく身振り手振りをして、子どもたちを安全な場所に避難させる行動をしました。
西さん世田谷の駒沢公園で犬の散歩をしていました。どの様な音がしていたかは分かりませんが、公園の作業車が上下に跳ねているのが見えて、変だなと思い、立ち止まったところ大きな揺れを感じ、頭上から落ちてくるものがないか目で確認して揺れが収まるまでその場で待ちました。
村越さん息子の高校の卒業式に出席後、帰宅して、午後からの東京都聴覚障害者連盟の会議に出席するため、晩御飯の支度していた時に地震があり、驚きましたが、健聴の息子たちがたまたま家に居たので安心でした。もし、家ではなく、駅や空港などにいたら、さらに不安な気持ちだったかと思います。
冨樫皆さん揺れなどの状況を視覚情報でとらえて避難の判断をしたのですね。
ーーこの10年でご自身の防災意識や周囲の環境で変わったこと、変わらないことはありますか。
植松さん災害時に限ったことではありませんが、電話リレーサービスの試験的導入が始まった時は革命を感じました。
緊急の問い合わせ手段は電話しかないことが多いです。例えば銀行の通帳を紛失した時などです。友人に代わりに電話してもらったり、遠方であっても直接出向くなど、人に頼ったり、なんとか自分でやりくりしなければなりません。
電話リレーサービスがあることで、電話がかけられる便利さを感じています。コロナ禍でさらに電話のやり取りも増えていて、身に染みています。災害時でも音声以外でやりとりができる仕組みがあると助かります。
※災害時に聴覚障害者が使用できるツール
●電話リレーサービス
聴覚や発声に障害のある人と、聞こえる人とを、オペレーターが手話や文字、音声を使用して通訳することにより、即時双方向につなぐサービス。2021 年度から公共インフラとして、緊急連絡・通報を含め24 時間体制で従来の電話と同様に双方向から通信可能となる。
●緊急速報メールサービス
携帯電話のメール機能を利用してとは、気象庁が配信する緊急地震速報などの災害情報を配信するサービス。
●Net119 緊急通報システム
音声による119 番通報が困難な聴覚・発声に障害のある人が消防への通報を行えるようにするシステム。
西さん東京都から「東京防災」の本が各家庭に配布され、参考になりました。この10年で「東京防災」に限らず、活字での防災情報が増えました。テレビやラジオなどの音声情報だけでは分かりませんので、文字での情報が増えたことで防災意識が高まりました。
また、電気の大切さを感じています。停電が起こると相手の顔の表情、筆談、手話が分かりません。個人的な活動ではありますが、節電を心がけています。
村越さん変わった点では、液晶パネルなどの掲示物が増えました。街中に文字情報が増えたことは本当に助かります。
変わらない点では、特に災害時において、緊急放送後すぐ文字情報が出てこず、情報が入らないことがあります。
また、エレベーターなどの閉鎖空間で外部との連絡手段が音声のみであることが多いです。羽田空港では、エレベーター内にテレビ電話が設置されていたり、扉が透明のため、外部と視覚情報でのコミュニケーションが取れますが、まだまだ同じ取り組みが広がっているとは言えません。
また、緊急時に点滅ランプ等でのお知らせが少ないです。やはり空港ではトイレ内にいる人に緊急情報を伝えるために天井に点滅ランプの設備がありますが、同様の仕組みがもっと普及して欲しいです。
冨樫災害時に限らず情報提供の方法が、音声情報を前提にされていることが多く、そのことが不便さを生んでいますね
ーー駅やデパートなどのサービス現場において企業に求めることはありますか
植松さん災害時に音声放送だけではなく、目で見て分かる情報をあらゆるところに設置して欲しいです。
例えば緊急事態が起きた時の避難ルートが案内掲示板等に掲出されているか、デジタル掲示板等に緊急事態の案内が瞬時に反映されるように準備ができているかどうか見直してもらえると嬉しいです。
西さん視覚による情報保障を多くしてほしいです。
誘導する時、文字入りの大きな旗を振ったり、「手話が少しできます」というビブスを着てもらうと助かります。
村越さんマニュアル通りではなくて、一人ひとりの要望に応じて対応してほしいです。
また、文字情報が出ていてもそれに気が付かないことがあります。例えばテレビで緊急ニュースが表示されるときは同時に音がでていると聞いています。同様に聞こえない人のためには音ではなく、視覚情報が必要ですから、同時に点滅ランプなどで知らせてほしいです。
冨樫自社の情報提供に偏りがないか確認し、解消出来れば解消し、すぐには難しいようであれば、合理的な配慮が求められますね。
危険回避や避難誘導の際、音声情報だけでは聴覚障害者には伝わりにくいです。聴覚障害者は外見からは判断しにくいので、周囲の人が気付いていない可能性もあります。
その場にもしかしたら聞こえにくい人がいるかもと考え、準備をしていくことが命を守ることにつながります。このことは加齢により聞き取りにくさを抱えている人に対しても当てはまります。
過去の災害でも高齢者や障害のある人が被害にあう割合は増加しています。高齢化率が28%を超えた日本において、誰もが分かりやすい避難情報の提供が求められています。
企業や商業施設においては音声情報や視覚情報など複数のコミュニケーション方法を確保することが重要です。
日頃からユニバーサルデザイン・バリアフリーを意識し実践することで、緊急時の安全確保にも役立てることができます。
防災介助士では、災害とは何か、を学び、高齢者や障害者など、災害時に配慮を必要とする、避難行動要支援者への応対について学ぶことができます。
防災においても忘れがちな多様な人への対応、バリアフリー対応についてしっかり備えておきましょう。
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11月23日に武蔵小杉駅前のこすぎコアパークで実施した「みえるバリアフリー教室&ボッチャ体験会」を開催しました。このイベントは、国土交通省の「心のバリアフリー推進のためのモデル検討調査事業」の一環として開催されました(共催:川崎市 協力:東急電鉄株式会社、株式会社東急ストア)。
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