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日本は高齢者人口率が28%を超える超高齢社会であると同時に、災害大国です。
高齢化と災害があわさることで、災害直後だけではなく、その後の避難生活においても多様な人を想定した取り組みが欠かせません。
本記事では災害に対する弱さ(脆弱性)は、人のライフステージによっても異なっていくものだと考え、その人の状況による備えを考える「防災ジェロントロジー」の考えに基づいた防災について紹介します。
今回は妊産婦のいる家庭における防災について考えていきましょう。
母子保健法の定義では妊産婦とは、妊娠中又は出産後1年以内の女子をさします。
そして、妊産婦が妊娠・出産・産後期間に感じた不安や負担について、厚生労働省の調査によると、自身の身体のトラブル、妊娠・出産・育児による身体の疲れ、十分な睡眠がとれないが上位にあり、身体的な不安を抱えていることが分かります。
妊娠初期であれば、「つわり」の影響があります。
つわりとは、妊娠中のホルモンバランスの変化によってあらわれる症状で、妊娠5週目位からあらわれることが多いです。
主な症状としては、胃や胸のむかつき、吐き気、匂いに敏感になる、寝てもずっと眠かったり、常にイライラした状態が続いたりします。
また頭痛が起こることもあります。つわりは個人差が大きく、妊娠初期から見られる人もいれば、ほとんど見られない人もいます。
精神面が影響することもあると考えられており、ストレスも大きな要因であるといえますので、避難先といえども無理をしない・させないように周囲の配慮が求められます。
そして、妊娠中(特に中期から後期)の方は、足元が見えない、しゃがめない、急ぐことができないといった傾向があります。そのため、段差やテーブルの角など、思わぬところで危険が生じますので、普段から家の中において躓いて転倒しないように環境を整える必要がありますし、避難先では危険と思われる箇所を確認しておきましょう。
また、落ちたものを拾うなど屈むことが難しい、迅速な行動ができない場合があるため、早めの避難を心がけるなど、いざという時の準備も必要です。
その他、妊産婦が注意すべき症状としては以下があります。
避難所などでは、特に気を付ける必要があります。
また、平均出産年齢もあがってきており、1975年25.7歳であったものが、2019年では30.7歳でした。
参考:令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)(外部サイト)
同、結果の概要(PDF)(外部サイト)
日本産婦人科学会によると、高齢出産とは「35歳以上の初産婦」を指します。
高齢出産により、流産の可能性が増える、子供が無事に産まれる率が下がる、赤ちゃんの発育に影響が出ることがある、難産になりやすい、などの影響があります。
このことから、高齢出産は災害時においてより母体にも産まれてくる子どもにも、リスクが高まることが推測できます。
同じ妊婦といっても妊娠期間により、体調の変化もありますので、その時期に応じた配慮や準備が必要になります。
自宅が安心できる状況であれば、慣れない避難所での生活より在宅避難を検討すべきですが、支援物資が受け取れないこともあります。
自宅で1週間程度は生活できる準備をしておきましょう。
日頃から水や食料などを多めに買い置きしておき、ローリングストック(消費しつつ買い足しをすること)を実施すると無理なく備えができます。
また、カセットコンロ・ガスボンベ、懐中電灯・電池、簡易トイレ(1人1日5回分を想定して準備)の準備も必要です。
避難時は以下をさっと持ち出せるように日頃から準備しておきましょう。
妊娠後期であれば、さらに・分娩準備品・新生児用品も準備しておきましょう。
また、感染防止のため、マスク、アルコールスプレー、体温計、ビニール手袋、タオルや着替えなども用意したいです。
妊娠初期の場合は、外見上では判断が難しいです。
しかし、この時期は、赤ちゃんの成長はもちろん、お母さんの健康を維持するためにもとても大切な時期です。周囲の人の理解を得るためにも、厚生労働省指定の「マタニティマーク」のキーホルダー等も、持参物に入れておきましょう。
その他、いざという時に家族や大切な人とどの様に連絡を取り合うのか、災害の影響のない遠方に住む知人を共通の緊急連絡先としておく。SNSを利用する。災害用伝言ダイヤル「171」や「WEB171」を利用するなど、普段から家族などで話し合っておきましょう。
妊産婦は日常であっても行動や生活に制限が生じることもあります。いざという時に、赤ちゃんと二人の命を守るために日ごろから備えをしていきたいですね。
防災介助士インストラクター冨樫正義
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