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認知症の人への対応は医療や福祉施設だけの話と思うかもしれません。
しかし、社会の高齢化による高齢者の増加にともなって、認知症の人も増え、地域や企業でも認知症の人への対応が求められています。
認知症介助士で認知症の人への応対について学ぶことができますが、この記事では認知症と思われるお客さまを事例に企業の接遇や接客の対応ポイントをいくつか紹介します。
定期的に公共料金の支払いを窓口利用で行われているAさま。
これまでも用紙の記入誤りなどがありましたが、行員が案内することで特に問題なく銀行利用されていました。
ところが最近は来店されると、たびたび口座開設を申込されるようになりました。
話をうかがうと、通帳と印鑑を紛失した、とおっしゃいます。
以前も紛失して口座開設したことをお伝えしても、そのことに関しては覚えていらっしゃらないようでAさまの不安といらだちを感じ取ることができました。
普段からAさまの対応をしていた行員Bさんは、Aさまをゆっくりお話しできるソファのあるカウンターへご案内しました。
Aさまが通帳を紛失されたとおっしゃることは否定せずに、お話をするうちにAさまも安心できたようです。
とAさまに確認し、店舗の上長と相談の上、ご家族へ電話し、その後ご家族と一緒にAさまは帰宅されました。
銀行などの金融機関において、認知症と思われるお客さまで、銀行口座通帳の紛失対応は対応数も多いケースです。
今回の事例では、金融機関という特性上、継続的にご利用されているお客さまであり、普段からの関係性ができていたために認知症による変化に行員が気づくことができていました。
接遇・接客の対応のやり方によっては、不安やいら立ちがさらにつのり、怒りだすなど感情的になることも考えられましたが、今回のケースでは認知症の人への対応で以下のようなポイントがありました。
住宅地が多い郊外のスーパーに高齢なお客さまが一人で来店されました。
バッグや買い物かごを持たずに店内に入っていき、何かを探しているようにも見えますが、店内中を目的なく歩き回っているようにも見えます。
しばらくすると棚に陳列してあった商品を手に取り、特に周囲を気にすることなくそのまま店外へ出ようとしました。
商品をレジで精算せずにそのまま店外を出ようとしていたお客さまに気づいた店員は万引きと思い、慌ててそのお客さまを制止し問いただしたところ、そのお客さまは悪いことをしたという様子でもなく、「これは、その、あっちの人が、だって自分が食べたいから」などとつじつまの合わないお話をします。
違和感をもった店員は、なるべくリラックスできるような雰囲気になるように対応を切り替え、会話の中から、近所に1人暮らしをしており、家族や連絡を取れる人がいないことが分かったため、地域包括支援センターに連絡をしました。
今後は安心して買い物ができるよう連携しながら対応することになりました。
記憶障害に加え、自分の置かれている状況や日時を把握する機能である見当識が低下することで、お店に入ったら自分がどこにいるのか分からなくなったり、今いるお店を、別の空間、例えば家のキッチンと認識しているかもしれません。
キッチンにあるものを取って移動しようとしたら、知らない人から急に怒られたように声をかけられて不安を感じた、という状態です。
見当識障害は認知症の中核症状の一つであり、個人の性格や性質、環境や心理状態が作用することで行動・心理症状(BPSD)へ影響します。
認知症による症状やその人の特性は様々あるので、今回のケースで考えるポイントを紹介します。
ベッドタウンの中心に位置する駅で、高齢な方が券売機の前に立っていました。
駅構内の案内をしていた駅員Aさんは、毎日多くのお客さまが券売機を利用するためその時は特に意識はしていませんでしたが、約30分後、別の対応を終えて券売機の近くを通ると、先ほどのお客さまがまだ券売機の前に立ってウロウロしていました。
駅員Aさんが「ご案内しましょうか?」と声かけしたところ、そのお客さまから「いや、、あの、行先が、、」という返答がありました。
駅員Aさんは混雑する券売機ではなく、窓口でお話を聞けるようにご案内しました。
手元で見やすいように路線図を用意して、今いる駅を指で示しながら説明していると、通院のために電車を利用することが分かりました。
路線図で降車駅をお伝えし、乗車賃を支払ってもらい、降車駅と共有し、ホームでの乗車まで案内し、お客さまは問題なく目的地まで向かうことができました。
認知症の人の外出と聞くと、あてもなく外に出てしまう、という思い込みがありますが、何らかの目的をもって外出した、もしくは外出の途中で目的地が分からなくなってしまった、というケースもあります。
この記事では、主にサービス現場での認知症と思われるお客さまへの接遇・接客を事例に紹介しました。
ここで紹介した事例や対応はあくまで1例に過ぎず、認知症の人は多様なニーズを持っています。
決めつけずに、その人に寄り添った対応をすることが、認知症の人への接遇だけなく、すべてのお客さまへのより良い接遇となります。
日本ケアフィット共育機構では、認知症介助士で認知症の人への応対を学ぶ資格を取得する他にも、事業者に求められる認知症の人への対応について、各種研修やコンサルティングを行っています。
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