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株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホックは、現在、J2リーグを舞台に戦っており、茨城県の県央、県北の15市町村をホームタウンとして活動しているサッカークラブです。
「新しい原風景をこの街に」をブランドプロミスとして掲げ、Jリーグの中でも、特に質が高い、地域に根差した取り組みを行っています。
前回の記事では、水戸ホーリーホックの特徴、地域社会での具体的な取り組みについて、お話していただきました。
後編となる今回の記事では、ホームタウンや新スタジアム構想について引き続き市原様にお話を伺っていきます。
(写真左)
株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホック 経営企画室 事業執行役員
市原 侑祐 様
(写真右)
ライター 日本ケアフィット共育機構 学生インターン
飯島 大翔
神奈川大学 国際日本学部 国際文化交流学科所属
2023年2月12日ケーズデンキスタジアム水戸にて撮影
ーー昨年、水戸ホーリーホックは、ホームタウンを県北の6市町を追加させましたが、どのような狙いがあるのでしょうか。
市原様一つの視点として日立市の存在があります。実は日立市は市町村別でスタジアムの来場者数を見たときに、水戸市、ひたちなか市に次ぐ3位です。日立市はスポーツが盛んな場所であるので、ここに潜在的にファン層を広げていけるポテンシャルがあると感じていました。
それと同時に県北エリアは人口の減少が茨城県内でも進んでいます。人口が減少しているという地域の課題に対して、非日常を体験できる機会の提供やホームタウンPR大使などの活動、MAKE FUTURE PROJECTのような社会貢献活動などを打ち出すことで、地域に非日常を与えることができます。非日常を感じていただいた人たちがクラブのファンになって、グッズを購入したり、試合を年に1,2回は来てくれるようになったり、今まで知らなかった選手を知ってもらい、クラブが催すイベントに参加してくれる人が増えたりするなど、県北エリアはクラブにとって新しい顧客を開拓する上で、非常に重要な地域であることは間違いないとかねてから考えていました。
ーー地域に根差した取り組みをすることで地域やクラブに変化はありましたか。
市原様一番大きな変化は、クラブが今まで知らなかった人たちを知ることができるようになったということです。取り組みの質が変わったことによって向き合うべき人たちが変わってきた、具体的には今まで以上にその地域に住む人たちの顔を見ることができるようになりました。すると、県北のエリアでいうと、水戸市にあるケーズデンキスタジアムと距離が離れているのにもかかわらず、なぜクラブを応援しているのかというきっかけや、スタジアムに来るようになるまでの過程など具体的で深い部分までお話ができ、知る機会が増えました。顧客の心理や顧客本来が持っている感情、感覚を引き出せるようになったことが大きな変化だと思います。
ーースタジアムで小島社長をはじめとしたスタッフの方々がサポーターの方々と交流しているのが印象的ですが、何か心がけていることはありますか。
市原様お客さんと密に会話ができる、我々が出向かなくても来てもらえる機会がホームゲームの21試合です。お客さんが本当に感じている喜びやクラブの課題を話してもらうというキャッチボールを通じて、お客さんとの関係性をより良くしていったり、お互いの距離を縮めたりなど、密なコミュニケーションをしっかりととることがファン・サポーターの深層心理を汲み取ることになります。それが、クラブがその先にやろうとしている施策のアイディアになることもあります。
また、今やっている取り組みがずれていないかを事実ベースで議論するためには、顧客が考えていることを正しく知ることがすべてです。だからこそ、試合の日には、少し余裕のできたタイミングでスタジアムの外に出てお客さんと会話することを積極的にやろうというのが今のクラブの方針としてあります。
ーー現在、新スタジアム建設の構想がありますが、今後、新スタジアムを使った地域社会での取り組みは何か考えていますか。
市原様新スタジアムの大きな軸はサッカーをするだけではないスタジアムということです。どういうことかというと、我々は日常のクラブ運営において、ただサッカーの興行を運営しているだけではなく、地域に求められることや地域の課題に対して向き合うような取り組み、活動を行いながらクラブ運営をしてきています。このような取り組み、活動が新しいスタジアムに集約していく、つまり、サッカーの試合がある日は約20日ですが、残りの約340日で新スタジアムを拠点に地域の課題や地域に求められている活動の場作りをしていくことが新たなスタジアムを計画する上で求められていると思っています。
ーーホームタウンの中には高齢者が多い地域もありますが、新スタジアムを建設するうえで、多様な人に楽しんでもらうための工夫は何か考えていますか。
市原様新しいスタジアムをつくることに限らずですが、年齢を重ねていくと車の運転がしづらくなる方や様々な事情で出歩き難い方もいらっしゃると思います。例えば、各地域からバスで送迎できる仕組みを作ったり、昨年準公式戦であるエリートリーグを日立市で開催したように、遠方地域から来られない方のためにクラブが出向いたりしています。公式戦でなくとも、ケーズデンキスタジアムまでなかなか足を運べないお客様にもプロスポーツ興行を楽しんでいただける機会を提供できるのではないかと考えています。
新しいスタジアムを作る上でという視点では、身体的なアドバンテージを持った方でもスタジアムをつくることに参画していただけるような機会を作りたいと思っています。具体的には、現在、eスポーツが世の中で盛んに行われていますが、これが将来的にはeワークという視点に切り替わっていくと思っています。自動操縦や自動運転などのことで、建設の視点で見ると、重機などの建設機械を扱うことも自動化していくと考えられます。そうすると、足が不自由な方でも手で自動操縦ができると建設機械を動かすことができます。障害を持った方でも地域のシンボル、誇りとなるような大きなプロジェクトに一緒に関わることができると、きっとスタジアム建設に関わったと誇りに思うと思いますし、関わった人たちが一緒にスタジアムに応援に行く機会も増えると思います。
まさにダイバーシティという考え方の一つですが、多様な人たちがスタジアム建設だけでなく、スタジアム運営という視点でも、ボランティアスタッフとして高齢者やハンディキャップのある方でも我々のクラブスタッフと一緒に仕事をすることで日常生活における非日常体験や生活へのメリハリなど、物心両面の豊かさを提供できると思います。作る視点でも運営する視点でも興行を見る視点でもいろいろな形でスタジアム建設との関わり方ができると思っているので、そのようなダイバーシティの視点を持ってクラブ運営をしていけるといいと思います。
ーーこのたびは、貴重なお時間を頂きまして本当にありがとうございました。
水戸ホーリーホックは、母体となる親会社がいないチームのため、地域に根差した取り組みをし、ファン・サポーターだけでなく、スポンサーも獲得してクラブを運営しています。特に、教育や農業などの地域の課題に対して様々な取り組みを多く行っており、地域に必要とされる存在になっています。また、様々な分野で取り組みを行っているため、普段サッカーに興味がない人にもクラブを認知してもらえる機会が増えているのではないでしょうか。
トップチームの選手、スタッフを含めたクラブ全体で地域での取り組みを行っているため、より質の高い取り組みになっています。特に、選手がオフを使って、主体的に活動しているのは、水戸ホーリーホックがどのように運営されているか、どのようなクラブなのかを選手がきちんと理解しているからこそだと思います。
新スタジアム構想では、試合日以外での活用方法を模索しているとのことで、どのようなことが行われるのか楽しみです。さらに、建設、運営の面で、多様な人たちが関われる仕組みを取り入れようとしていて、水戸ホーリーホックに関わっている全ての人とともに歩んでいこうとしていることがわかりました。
これらのことから、水戸ホーリーホックでは、地域に必要とされる存在となり、地域の人たちとクラブを作り上げていくため、地域の課題に積極的に向き合うこと、クラブ全体でそのクラブのあり方を共通認識すること、そのクラブに関わることを誇りに思ってもらえることを大切に地域での取り組みを行っていることがわかります。
最後になりますが、シーズン開幕前で、お忙しい中、今回取材にご協力いただいた市原様、誠にありがとうございました。
取材/文 飯島大翔
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